5月28日〜5月30日分のログ

5月16日〜5月25日分のログ

彼女ちゃんが手渡していたものは、ハチマキだったような気がする。あの人の分も
縫ってあげたんだ。その横をアネゴと明日こそは晴れて欲しいねって話しながら通
りすぎた。私、笑ってるじゃん。それに、ふたりを見ても平気じゃん。そのままユニ
フォーム君の前を通りすぎた。昨日あゆみちゃんに話したから、やっぱり気になっ
た。でも、ドキドキとかはしなくて、ただ、背が高いなって思った。それから、もっと
もっと知りたいなって思った。あの人以上に知らないことばかり。これが少しずつで
いいから恋になったらいいのにって思った。ドキドキしたいな。たくさんたくさん。

菊さんとアネゴに『気になる人がいるかもしれない』って伝えた。ふたりはキャーキ
ャー言いながら教えて?と言った。両手を筒状にしてふたりの耳元でユニフォーム
君の名前を言った。そのとき横をあの人が通ったけど、名前を言うドキドキで気に
ならなかった。私、ドキドキしてた。少しだけ。伝えると、おおお〜って言ってた。
アネゴは『ええ人やし優しい人だよ』って教えてくれた。中学が一緒だったみたい。
ふたりに伝えた休み時間のあとの授業がユニフォーム君と同じだったのには笑っ
た。授業中、少しだけ見てしまった。暑いのか、シャツの袖を何度か折っていた。
真っ黒に日焼けした腕が見えた。頬杖した細長い指とか大きな手とか、ちょっとだ
け、ちょっとだけ気になった。でも、ドキドキはしなかった。

放課後、あゆみちゃんの教室の前でお話していると、ユニフォーム君と部活仲間く
んたちが教室のほうへ戻っていった。ここで待ってれば、もう1度会えるかなって
なんとなくそう思ってあゆみちゃんと廊下の壁にもたれてお話してた。ユニフォーム
君が教室から出てきたとき、わーって思った。だんだん近づいてくるのが何だか楽
しくて、笑いがこらえられなかった。目の前を通り過ぎたとき見れなかった。あれ?
通りすぎてから、あゆみちゃんと笑った。キャー、とか言いながら階段を下りようと
したらまだすぐ傍のところにいて、声が聞こえていなかったかハラハラした。階段を
下りながら、また笑った。何だか楽しかった。

食堂へ行くと"クリームメロンパン"があった。私の好きなクリームパンとメロンパン
が同時に食べれるなんて!ダイエットのことなんて忘れててすぐに買ってしまった。
あゆみちゃんとさっきのことをお話しながら食べていると菊さんがやってきた。菊さ
んに『本当に気になってきちゃった』って言うと『それ鳩さんに言ったら恋多き女っ
て言われちゃうぞ』って言ってたけど、きっと菊さんは応援してくれる。あゆみちゃ
んも、中1のときからずっとずっと見守っててくれてる。頑張ってもいいのかな、な
んて思いながら食べてると、菊さんが『ごっちってほんまにおいしそうに食べるよ
な』って笑った。嬉しかった。クリームメロンパン食べれたことも、新しい恋ができる
かもしれないことも、嬉しかった。

お弁当箱を教室に忘れてきたことに気付いて、あゆみちゃんともう1度教室にあが
った。誰もいない教室。クラス掲示の係のプリントのユニフォーム君の名前を見た。
あゆみちゃんが『ごっちの席はココ。ユニフォーム君はココ。それで私がココで、
(あゆみちゃんの)好きな人がココ。』と席をひとつずつポンってたたいていった。
あゆみちゃんとも、あゆみちゃんの好きな人とも違うクラスだけど、もしそうなったら
どんな感じなのかな?あゆみちゃんと4年間も一緒なのに一緒のクラスになったこ
とない。学科が違うから、これからも絶対同じクラスになれない。『クラス一緒が
ええよねぇー!!』ってふたりで声合わせて笑った。絶対本当にならないけど、これ
からもこんな風に言い合えたらなって思った。教室を出るとき、ユニフォーム君の
机をポンってしてみた。笑った。これが恋になったら、楽しくなるかもしれない。
そう思った。

5月15日(水)

 

ゆきちゃんが影を見て『なんか青春やね』って笑った。誰もスタートの声をかけず、
十人の並んだ影を見てた。夏を感じさせる強い夕日が背中にジリジリと当たった。
この時期になると、どのクラスもどの学年もどの先生も運動場に集まって、体育祭
の練習に励む。 いっせーのーでッの掛け声。揃った足音。ハチマキで痛くなる足
首。ほんとに青春だって思った。ずっと笑い声が耐えず今日が終わらない気さえし
た。心の中はメンバー表のリレーのところにあの人の名前が書かれていたことで
いっぱいだった。あんなに嫌がってたけど、やっぱりリレーの選手になるんだ。そ
りゃあの人は速いもん。絶対絶対、応援しよう。あの人がOKしたの、彼女ちゃんが
頼んだからかな?いいな、いいなぁ。最近はふたりを見るの、好きになりました。こ
れはこれはすごく早い回復力です。わわわ。私は思ったよりもズルズル女じゃなか
ったんだ。それにそれに、ある人のユニフォーム姿を見てドキドキしてしまったなん
て、すごーく軽いというか、なんというか、もう、単純というか。

あの人のこと、ここしばらくまともに見れなかったけど普通に見れるようになった。
笑ったときの笑顔とか、すごい集中力とか、おもしろいところとか、やっぱりいいな
ぁって思っちゃうけど、本当にいいなぁって思うけど、それを笑って見れるようにな
った。ずっと好きなまま恋が終わって良かった。いつか、もっともっと普通にあの人
としゃべれるようになったとき『ほんまにあの時は好きやったんでー』って、笑って
伝えることができたらいいなぁって思う。今までこんなにあの人のこと想ったこと、
遅くなってもいいから、どんな形でもいいから、少しでもいいから、自分であの人に
伝えたい。もうバレてたことは知ってるけど、やっぱり自分で言えたらって思う。

気になる人を、誰かに伝えちゃったら、余計に気になってしまう私。ユニフォーム君
のことをなんとなく言いたかっただけなのに妙に恥ずかしがって戸惑いすぎたから
言ったあと、妙に照れくさかった。あゆみちゃんの目がキラキラしてた。そうなんや
ーって声が嬉しそうだった。応援してくれる気が満々みたいだった。私も、新しい恋
してもいいのかなって思ったけど、少し片想いするのが恐くなってる自分がいるよ
うな気がする。どうなのかな、どうなのかな。
でも、新しい恋してもいいかなって思った帰り道。中学の近くで、小さな自転車、ツ
ンツン頭のラケットを持った人を見かけた。ちょっと猫目の、でもとても優しい雰囲
気の。間違いない、間違うはずがない、中学のとき好きだった"あのヒト"だ。携帯
よりトランシーバ派なんやって笑ってたあのヒトだ。わーわーわー、もう、頭の中も
心の中もグルグルしてる。久しぶりに見れて嬉しかった。部活してるのかなって嬉
しかった。グルグルしてる。よく分からない。自分のことは自分がイチバンよくわか
るって、絶対絶対うそだ。私のこと、イチバンよく分からないよ。

体育祭、私はムカデ競争と十人十一脚とブルーシートと長縄と、実況中継します。
ユニフォーム君、何に出るのかな。ちょっとだけ、やっぱり気になるかも。わわわ?

5月14日(火)

 

きっと平気。平気。平気になってきた。大丈夫かも、私。
やっぱりあの人のことを普通のクラスの男子って思うには無理があるけど、彼女ち
ゃんとは普通にしゃべれるようになった。たぶん、大丈夫。というか平気!です。
羨ましいっていう思いだけになれるといいな。あの人と彼女ちゃん、ふたりが一緒
にいるところが、だんだんみんなの中であたりまえになってしまうのが、恐くて悔し
くて辛くてしょうがなかったけど、私の中でもあたりまえになってしまっているから
これでいいんだって思う。あたりまえなんだもん。あたりまえなんだ。今は言い聞
かせるようになってしまっているけど、きっと私の中でも本当にあたりまえになる。
恐くて悔しくて辛い、なんて汚い思いが早く消えてしまいますように。

『4優勝 "よゆうっしょ"』が、うちのクラスの旗に書かれる文字。『"優勝"と"余裕
っしょ"カケようで〜!!』ってゆかりっちが言ったから、それに加えて私が『"優勝"
の前に4組の"4"書いたらもっと"余裕っしょ"にならへん?』と言った。そしたら
それに決定になった。すごーく嬉しかった。何だか嬉しい。体育祭まであと1週間も
ないんだ。うー、頑張らなくっちゃ。あの人は50b6.8秒だったのに、リレーに出
ないみたい。断ったって。クラスで1番速いんじゃないの?がんばってるところが好
きだったのに。…気にしないって思ったのに、やっぱりあの人の情報だけは知って
る。わーわー、もう。バンバンバン。

ケンちゃん(担任)の面接があった。何分か真面目に進路のことや勉強時間のこと
とか話してた。大学の推薦入試のことや、専門学校で迷ってること話してたら『親
は何て言うん?』って聞かれた。私が『え、え?!…コウイチと…』って言ったら今ま
で無表情だったケンちゃんが大笑いしだした。『ぶはは笑 その将来のことについ
てや!お前の親の名前と違うー!笑』って。わわわ。ケンちゃんは私の進路のこと
について、親はどう言ってるの?って聞きたかったみたい。せっかく落ちついてる
ところをアピールしなくちゃって思ってたのに。やっぱり無理だった。ひぇぇ。そのあ
とも私が真面目なこと話してるのに笑い出すし、何なんだーって感じだった。教室
を出るときに『しつれいしましたー』って言っただけなのに笑われた。えええ。

そのあと5時半からの予定でホームステイのフェアウェルパーティの企画書につい
て、ワッキーの面接があった。でも始まったのは6時を過ぎてた。ワッキーには誰
も恐くて逆らえなかった。わわ。恐くて厳しくて有名なワッキーだけど、いい先生だ
った。パーティーに出す料理で、みんなが『やっぱり讃岐うどんでしょ!!』って言っ
てもワッキーが『イギリスの人の味覚にはうどんは合わんだろー』と言ったけど、
『そんなん、残ったらうち食べるし!』って言ったら『お前は食べれたら何でもええ
んだろ。笑』ってあの恐くて厳しくて有名なワッキーが笑った!わわ、これはすごい
ぞ。というかケンちゃんやワッキーに笑われる私って。えー!!結局面接は7時を過
ぎても終わらなかった。ウメさんが『7時きちゃうんですけど』って言っても、ワッキ
ーは『そうだなぁ。』って感じだった。えええ!でも何とか終わった。教室へ戻ろうと
するとあゆみちゃんがいた。ひゃーひゃー、待っててくれたんだ。嬉しかった。

あゆみちゃんが『ごっち、ほんまに元気になったよね』って言ってくれた。すごーく
嬉しかった。初めは、修学旅行から帰ってきたばかりのときは、元気な"フリ"して
る私に気付いて欲しいっていう思いがどこかにあったかもしれない。同情して欲し
かったのかもしれない。でも、今はあゆみちゃんにもあの人にも彼女ちゃんにも、
"元気"な私を見て欲しいなって思った。みんなが私っていったら私の笑顔を思い
出せるように。いつか大好きだった人が書いてくれた"その笑顔をたやさず"って
ことばが、今の私の1番の"元気"の素になっている気がする。

♪亜麻色の〜長い髪をぉ〜・・隣の部屋から聞こえてきた。え、これって最近CM
で聞く曲だ。え、え、何でお父さんが知ってるの?もしかしてCDとか出てたのか
な。部屋に入ると嬉しそうにウォークマンでCDを聞きながら鼻歌を歌ってるお父さ
んがいた。『何でその歌知ってるん?!』って言うとすごくビックリして、『え、俺、歌っ
てたか?聞こえた?!』って恥ずかしそうだった。かわいい。CDを見ると古かった。
亜麻色の髪の乙女 ヴィレッジシンガーズ 調べてみたら、今は島谷ひとみが歌っ
てるんだね。知らなかった。ひー。『今CMでよくかかってるよねー、お父さん懐か
しくなって聞いてるん?』って言うと『おぉ?CMで流れてるん?知らんぞ。』と言っ
てまた歌い出した。部屋を出ようとすると『俺はこの曲が好きなんや。』って言って
た。お父さんがみんなに聞こえないようにウォークマンで聞く曲はお気に入りって
知ってる。変なクセだなーとか思ってたけど、目をつぶって聞いているのをみて、
なんとなくそれがわかった気がした。なんとなく。

目をつぶっていろいろ考えてみた。誰にも話さずにひとりで考えてみた。1番最初
に浮かんだのは、誰だろう。何だろう。よくわからなかったけど、2週間前の私とは
きっと違うことを考えた。誰だろう。何だろう。

5月10日(金)

 

昼休みは教室でのんびり友達とお話するのが好きだったのにな。教室にいられな
い。はっきりとは見なかったけど、見れなかったけど、あの人と彼女ちゃんは
同じ机で勉強してた。いつか私がすごくすごく勇気を出して簿記のわからないとこ
ろを聞いたとき教えてくれたみたく、優しい感じなのかな。きっと彼女ちゃんだから
もっともっと優しい感じなのかな。そんなことばっかり考えてた。でも、前ほど気に
ならなくなった。片想いのときみたく、ずっとずっと見なかったら気にならないじゃ
ん。平気、平気。見なかったらいいんだ。見なかったらいいんだ。

1年と少し前の推薦入試の筆記試験のとき、私の前に座っていたのがしおりちゃ
んだってことを、今日初めて知った。こんなに長い時間一緒にいたのに。わわわ。
しおりちゃんとは入学生説明会のときも隣の席になったことがあって、それから
入学して同じ放送部に入ったことを知ってそれだけでも運命感じたのに、入試のと
きもって知って、もっともっと運命だって思った。すごいな、なんかすごいな。

『あ。朝倉先生だ!』最近朝倉先生が人気だ。私が入学式のとき、放送の調整室
から新しく来た朝倉先生見つけてカッコイイって言ったのに。私が見つけたの
イチバンだったのに!みんなこの前まで黒田先生って言ってたのに!わーわー!
みんながキャーキャー言う中、近づいてくる朝倉先生にドキドキして思わずタエち
ゃんの腕をギュってして下を向いてしまった。タエちゃんが『…えええ!!ごっちぃ
ー!!!』って言った。朝倉先生が通りすぎたから、タエちゃんの肩に頭を乗せてると
『ごっち、もう何かメロメロやん!笑』ってキエちゃんに言われた。どわわ。
カッコイイ人を見たらこうなっちゃうんだ。好きな人を見たらこうなっちゃうんだ。
好きな人…あの人を見たときこんな感じだったから、そのときキエちゃんがいたら
『メロメロやん』って言われてたかもしれない。

帰り道、久しぶりにあゆみちゃんと懐かしい中学校のときの話をした。中学でも
お互いずっとずっと長い片想いしてた。卒業式の後に私に話があったんだって好
きな人が友達に話したみたい。だけど、好きな人は1度だけこっちを振り返って
そのまま帰ってしまった。もし、そのとき私が勇気をたくさんたくさん出してたら
何か変わってたかもしれない。
恋は"もし、あのときに"って何度も何度も後悔することが多い。他のことにおいて
もきっとそうなんだと思うけど、私は恋でいっぱいいっぱいだから、恋に限ってみ
た。でも、何度も後悔しても、泣くことがあっても、変な書きかたになるけど何もし
なかったから、今の恋ができたのかもしれないなって。だから、今回何度も何度も
もっと早く伝えていればよかったって後悔したけど、もう少し先の私が今回の私の
何もできなかったことを、何もしなかったことを、それでよかったんだよって思って
くれたらいいなぁ、なんて考えてみた。良いように考え過ぎかな。考え過ぎだ。

あの人への片想いが終わってしまって、また"あのヒト"のことを好きになりそう。Y
君のときもそうだった。あのヒトが今どんな風になってるのかなんて知らないのに。
1度、あんなに片想いすると忘れられなくなっちゃうのかな。心の中に閉まってお
いたはずなのに。出てこないで、出てこないで。またドキドキしちゃうから。不安定
で、自分がよくわからない。気がついたら卒業アルバムのメッセージ見てたんだ。
気がついたらあのヒトからの年賀状見てたんだ。でも、気がついたらこの前バック
から外して、どこにいればいいのかわからなくなったワンちゃん見てたんだ。

自分がよくわからない。恋をしているようで、していないのかもしれない。

5月8日(水)
最後のほうの"あのヒト"は、中2からずっと好きだった人。卒業式の後に話があるって言ってくれた人。アルバムに"その笑顔たやさず"って書いてくれた人。 今年の1月、年賀状の返事をくれた人。『キモチ』にたくさん出てきた人。 思い出すなんておかしいよね。過去振り返るなんてダメだよね。最近の自分が嫌いです。

 

『あ!ごっち髪切ったんやー!!』"おはよう"よりも前にみんなが言ってくれる。
ちょっと前髪短くしすぎちゃったかなって思ったけど、実際そうなんだけど、
似合ってるよってひとことでこの前髪がお気に入りになった。みんなのひとことが
とても嬉しい。みんなに会うのが5日ぶりだからかな。

1時間目の体育。体育祭のフォークダンスの練習。わー、どうしましょどうしましょ。
1ヶ月の前の私がとてもとても楽しみにしていたこと。2週間前の私がとてもとても
嫌がっていたこと。今の私は、どうなのかな。前ほど楽しみじゃないし、どうしても
嫌というわけじゃない。でも色んな男子と手を繋ぐのは嫌だと思った。なんとなく。
『足とかこけそうになっちゃうよね』というと、初めのパートナー君は『そうそう、
もう忘れたしー。左?左?』とかって言ってた。こけそうになった。山下くんがパー
トナーになったとき『ウメさんもう少しだね!』って言うと『あは!』って言ってた。
いいな、この!去年は全然知らなかった人たち。1年間一緒に学校生活送ってき
ているから、知らない人なんていない。"同じ系列の人だ""友達の好きな人だ"
去年の体育祭のときも、この人と手を繋いだなんて覚えてない。同じ系列の人も
友達の好きな人とも、あの人と手を繋いだことも覚えてない。
あの人と彼女ちゃんがパートナーになったとき、見れなかった。見たくなかった。
彼女ちゃんとは話せるのに。あの人が教室にいても平気なのに、ふたりが一緒に
いると、ズキズキしてしまう。気付かないフリをしてしまう。下を向いてしまう。

曲のサビが終わったころ、ふと気が付いたらあの人がうーんと近くになってた。
さっきまでは円の反対側にいたのに。えーえーえー!!ぼーっとしてるんじゃ
なかった。あと3人。あの人の声が聞こえる。手に変な汗かいてきちゃった。
手が熱くなってきた。顔がほてってきた。ドキドキ、してきた。でも曲が終わろうと
してたから、どうせなら今終わって欲しかった。そしたら手を触れなくていいから。
手が熱いこと、知られないから。ドキドキしてること、バレないから。
フェードがかかって小さくなっていく曲。あと2人。誰がパートナーかも見てなかっ
た。『もう終わりそうだよねッ!!』って言い聞かせたのだけ、覚えてる。わわ。
あと1人。曲はまだ終わりそうになくて、泣きそうだった。終わってよ、ねぇ。
手は熱くなって、あの人が傍にいることが見なくてもわかった。この人の手を離し
たら、次にいるのはあの人。 手を 離した。
目の前のあの人の手をとった。顔は見れなかった。曲が終わりそうだった。どわ。
片手から両手になった。先生がテープを止めようとしてたから、手を離した。
『終わり?!終わりッ?!』って自分の手を合わせた。これじゃ、意識してるのバレバ
レだよ。バレないようにって思ったのに。平気だよって、普通の男子と同じだよっ
て、思ってたのに。
手を合わせて終わったことを喜んだフリをした。本当は最後まで踊りたかったの
に。1度繋いだ両手を途中で離してしまったから、余計に手にドキドキが残った。
あの人の手。1ヶ月前の私なら、どんなにどんなに嬉しかったかな。
それにしても、やっぱり私は誰かに仕組まれてるんじゃないかと本当に思う。
何でこんなにたくさん人はいるのに、最後のパートナーがあの人だったの?
しかも途中なんて。タイミングいいのか悪いのか。

このことをウメさんや菊さんに言ったら笑われた。『微妙やのー!!』って。本当に
微妙だよ。きっとあの人も『お前かい』って感じだったんじゃないかな。わわ。
タイミング悪いって、変な運があるなって思ったけど、最後に繋いだのがあの人の
手でよかったなって思った。途中だったけど、それでも繋げてよかったなって思っ
た。

文書処理の時間、あの人が長尾くんに大きな声で『俺"おっさん"ってヤツの記録
抜けた!!!』ってすごく嬉しそうに叫んでた。キーの早打ちで、あの人のパソコンで
過去に"おっさん"って人が記録を残してたみたいで、やっとおっさんに勝ったみた
い。そのひとことにはみんな笑ってて、私ももちろん笑った。やっぱりあの人の
がんばり屋さんなところ、好きだなぁ。いいな。

国語の時間、前回の授業のときに必ず持ってくるようにって言われてた便覧や古
典文法などのテキストチェックが行われた。持ってきていない人はその場で立た
なくちゃいけない。便覧、古典文法、古語辞典…と続いていくうちに起立した人
は増えていった。私はちゃんと全部持ってきていたし、あの人も持ってきてた
みたい。ところが先生が『じゃぁ残りはコレね。ノートと教科書。これはみんな
調べなくても持ってきてるわねー』と言ったら『どわー!!!笑』ってあの人が叫ん
だ。『俺教科書忘れたがー!!笑』って。笑った。すごいおもしろかった。先生も
『あら、ここにおバカがひとり。』って言ってた。あの人は持ち物全部持ってきた
つもりで自信満々だったんだろうな。まさか教科書って。かわいかった。

諦めなくちゃいけなくても、恋じゃなくても、私はあの人が好き。すごーく楽しくて
おもしろくて、みんなの人気者で、がんばり屋さんで、ときどきかわいくて。
こんな風に思っててもいいのかな。
諦めるけど、きっとあの人のことなんてキライになれないよ。

5月7日(火)

 

本当かと思った。夢だとわかった瞬間 ちょっと安心した。だけど 正夢になる。
そんな予感もした。どうか 本当にならないで。夢の中の私は落ち着いてた。
目の前でそんなことされたら きっと私はその場から逃げ出す。落ちついてなんて
いられないだろう。

ゴールデンウィーク。あの人と彼女ちゃんは毎日会ったりしてるんだろう。お互い
部活で忙しくても、帰り一緒に帰ったり。ね。疲れなんてふっとんじゃうよ、絶対。
好きな人と一緒に歩けることだけで幸せで、緊張して、ドキドキして、何を話せば
いいのか分からなくなっちゃうけど、沈黙が恐くて、つまらない子って思われたく
なくて、話題を頭の中で少しだけ考える。でも好きな人のするお話が面白くておか
しくて、結局ずっと笑ってた。…そんな帰り道、高校に入ってから全然だ。そんな
帰り道があったときも、私は小さな片想いしてた。冬で暗くなるのが早いから、
家の近くまで送ってくれた人。ほんの少し好きだった。誰にも言わなかった。

一緒にいて安心できる人。沈黙が続いても違和感がなくて恐くならなくて、そんな
仲になれる人がいたらいいなって思ったときがある。今もそうなのかもしれない。
でも、私はあのときドキドキしたみたいな帰り道に憧れる。大好きな人と一緒に
会話を探しながら、ドキドキしながら帰りたい。こんな考え方が子どもなのかな。

夢の中。学校の教室、だと思う。教室はザワザワしてて、でも音は聞こえなくて。
あの人が彼女ちゃんにキスをするんだ。私の目の前で、長ーいキス。付き合って
るんだから、キスなんてあたりまえだろうけど、何も私の目の前でって思って
私はあの人に言ったんだ。何か言ったんだ。そしたらあの人は無表情でどこかに
行ってしまった。夢の中の私は落ち着いてた。きっと本当の私ならその場から逃
げ出すだろう。

素敵な夢を口に出したらそれは正夢にならないよ。本当になってほしくない夢を
口に出したら正夢になっちゃうよ。誰かが言ってた。

5月6日(月)

 

あの人の試合の結果がすぐに分かるように携帯のBookmarkに入れておいた
地元の県大会のサイトのアドレスを消して、いつか叶いますように、なんて思いを
ちょっとだけ込めていたカップルの待ち受けを変えて、壁にもたれた。
ふじこからもらったあの人のコピーメール。本当だったら4月1日の日付のメール
なんてとっくの昔に流れちゃってるはずだけど、きちんと別のフォルダに入れて
保存マークつけてあるから、まだ、私のところに残ってる。きっとあの人の携帯の
送信BOXにも、ふじこの受信BOXにも残ってない。私の携帯にだけ残ってるメッ
セージ。この2通のメールだけはきっとこれからも私のところにあるんだ。削除ボタ
ン、あれから何度も押そうと思ったけど、押せなかった。

タケワっちから朝イチバンに『カラオケ行かん?』ってメールがあったけど、今日は
何となくそんな気分じゃなくて、バイトだからと断った。今日はバイトも休んじゃっ
たのに。あれから色んな人が元気付けてくれる。パーっと遊んで、忘れようって言
ってくれる。やっぱり、忘れなくちゃダメなのかな。まだ好きなのに?

家のインターフォンが何度か鳴っても、電話が鳴っても出なかった。居留守してし
まった。居留守なんて小1の初めてのお留守番以来かもしれない。家族はみんな
出かけてて、家には私ひとり。何だかすごく寂しくなって外に出た。こんな風に
ひとりが恐くなったのは、やっぱり小学校以来かもしれない。
最近朝が弱かったり雨が降ったりで、学校に車で送ってもらう日が続いていたの
で自転車に乗るのが久しぶりだなぁとか考えながらカギを開けたらパンクしてた。
ひゃー、いつからだろう?これが学校へ行く朝じゃなくてよかった。それにしても
ツイてないなぁと思いながらこのまま家に帰ろうか、とも考えたけど歩き出してた。
先月末に開通したばかりの大きな通りの歩道を歩いてた。この何年かで私の家の
周りは一気にお店がたくさんできた。友達に家の場所を伝えると必ず羨ましがら
れるようになった。私がここに来た小3のときは、学校へ行く道の真中にはトンボ
が止まっていたのに。用水路にはフナがたくさん泳いでたのに。今ではそれがウ
ソのようになってしまった。

5分ほど歩くといつもお母さんと一緒に来る美容院についた。お母さんは私より
スタイルがすごーく良くて、オシャレだから美容院やショッピングするのは、友達
とじゃなくて、決まってお母さんと一緒。友達からは仲良しだねっていつも言われ
る。そんなお母さんが今日はいなかったけど、何となく美容院に入った。お母さん
がいないから『初めての方ですか?』って言われちゃうかな、とか考えてたら
いつものお兄さんに『お。いらっしゃいませー!カットかな?ちょっと待っててね』
って言われた。なんとなく嬉しかった。でも、なんとなく来ちゃったからお金がある
か心配だったけど、何とか足りそうだった。ふー、よかった。

いつもは肩につくかつかないくらいでって言うのに、今日は短くして下さいッとひと
こと言った。担当のお姉さんはビックリしてた。『思いっきり短くしちゃってもいい
の?』と言われたから『思いっきりじゃない程度に』って答えたら笑ってた。雑誌を
読みながら髪が切られていくところを見るのが結構好き。自分の思い通りになる
のが楽しくてしょうがない。『はいっ、できあがりだよ。』新しい私。中2以来かな、
これくらいまで短くしたの。やっぱり失恋には髪切るのがお約束なのかもしれな
い。すごーく、スッキリした。帰り道は歩きでよかったって思った。なんとなく、いつ
もより胸を張って歩いた。なんとなく。

そのまま家を通りすぎて、もうひとつの大通りへ向かった。家から2分のところな
んだけど。こうやって歩いてみると、何でこれだけの距離をいつも自転車や車を使
ってたのかなって不思議になった。歩いても全然苦にならないのに。カメラ屋さん
とCDショップが一緒になってるところで欲しかったシングルとアルバムを買うと、
いつものレジのお兄さんが『あれ、留学?ホームステイはまだなんかな?』って
言ってくれた。以前、ここでパスポート用の写真を撮ってもらったんだ。お兄さんは
友達の間でもカッコイイって有名で、私は覚えていたけどお兄さんが私のこと覚え
てるとは思わなくて、ビックリして、嬉しかった。ここのお店に来るときはいつも
制服なのに。ましてや今日なんて髪切ったばかりなのに。わーいわーい、連休あ
けたら友達に自慢しちゃおうっと。

ルンルンの帰り道。この道は小・中学校のときの帰り道でもある。久しぶりに歩い
て通るなぁなんて思って、ふと立ち止まった。えみちゃんとミッフィーと電信柱ごと
にジャンケンをして、ランドセルを変わりばんこに持ったこの道。私が立ち止まって
いるところで3人は別々の方向に別れなくちゃいけないから、いつもここでずっと
お話してたんだっけ。そんな細い曲がり角があったはずなのに、お店の駐車場に
なってしまっていた。これじゃぁえみちゃんが帰れないじゃん、ね。そういえば
中学のとき部活仲間でため池へ登る小さな道の横の茂みに作った秘密基地があ
るところも、この前工事されていた。生活はどんどん便利になっていくけど、
忘れかけそうな思い出の場所がどんどん壊されていく。いつか本当に忘れちゃい
そうだよ。もう、その場所はないけど、忘れないでいたいって思った。

もう、あの人のことは諦めなくちゃいけないけど、今までドキドキしたこととか
忘れないでいたいって思った。

5月3日(金)

 

『おはよう!』
廊下にいる菊さんとジャスミンにそう言って、カバンを机の上に置き すぐに私も
ふたりのところへ行く。次々に登校してくる友達におはよう、とか 今日の古典の
単語テストのこととか話しながら、窓から自転車小屋を見下ろす。予鈴が鳴ると小
さなHRに使われていない教室からウメさんと山下くんが出てきて、いつもみんな
でからかうんだ。次々に登校してきた生徒が階段を上がってきて、その中にあの
人を見つけて、私は気づかないフリをしながら、嬉しくてしょうがなくなる。
いつもと同じ朝の風景。ほら、何も変わってない。大丈夫。

あの人がロッカーへ教科書か何かを取りに行くとき、彼女ちゃんの近くを通る。
そのときに彼女ちゃんの頭をポンってしてて、わぁー、いいなぁって思った。
私があの人と付き合えたらしてほしいなって思ったこと。なのに。でもそんな風に
羨ましく思いながらも、やっぱりふたりは付き合ってるんだってことを実感してしま
う。泣いた日、これが夢だったらって何度も思ってしまった。朝起きたら友達がい
つも通り私を応援してくれてたらって。夢の中でさえもそう思ったかもしれない。
でも、ふたりが付き合っていることも本当で、ふたりと同じクラスなことも本当で
あの人と同じクラスなこと、夢みたいって思ったのに、夢であって欲しかったって
今の私は思っている。不思議不思議。何だか変だよ。私。

今日から1週間かけて個人面談がある。その時間表が朝のSHRの後に教室の前
に張り出されたので、掲示板に近かった私はすぐに席を立ち、見ることにした。
そしたらあの人と長尾くんもすぐに見に来て、きっと2週間前の私ならすごく嬉しく
てしょうがないくらいの近さになった。でも、今の私でも嬉しくてしょうがなかった。
でも、さすがに気まずいよって思って長尾くんに目で訴えたけど、長尾くんは私が
あの人のことを、もう何とも思ってないって思っているので気にしていないようだっ
た。そんなに簡単に気にならなくなるなんてできっこないよ。できっこない。

昨日、私はプンスカしてた。菊さんに『ごっちの怒ってるところ初めてみた!』って
言われるくらい怒ってた。と、自分では思う。ゆかりっちには笑われた。怒ってる
のに!と、いうのも、あの人が彼女ちゃんに私があの人を思っていることを言った
みたい。それで私のことをどうするかっていう話になったみたいで、仲良くしていこ
うってことになったみたい。ふじこが彼女ちゃんたちとしている交換日記に書いて
あったんだって。(ふじこ、私に勝手に教えちゃってもよかったの?)
私、あの人に好きって伝えてないのに。伝えさせてくれなかったのに。自惚れな
いでよ、あの人くん。でも、自惚れてもいいくらい好きだったけど。想ってたけど。
それに、何で私のことなんて気にするの?私が負けたこと認めなさいって感じに
なっちゃうじゃないかぁ。…負けたんだけど。ね。わーもう。そんな風に気にかけて
くれるんだったら、もう少しの間目の前でラブラブするの待ってほしいなぁ、みたい
な。わーもう。私矛盾してる。ふたりがラブラブできるようにって思って、気にして
ないよって強くなって、平気になろうって思ってたのに。自分がよくわからない。
彼女ちゃんに交換日記の中で私は『あの人』って書かれてたんだって。何だか
他人みたいでちょっとだけ辛かった。いつもは『ごっち』って呼んでくれるのにな。
ちょっとだけ色んなことが辛くて、今までの不安とか悔しさとか色んなものが一気
にきたみたいで、たったこれだけのことなのにプンスカしてた。

今、ゆっくり考えたら私の気持ちがちゃんとあの人に伝わってたんだって。わわ。
今までの私のドキドキしたことが、ちょっとでも伝わってたんだって。嬉しくなった。
このことを朝、お母さんに言ったら『幸せな子やね〜』って。きっと単純って言いた
かったのね。ふーんだ。菊さんも考えてくれていたみたいで、昨日は一緒に怒って
くれたけど、今日は『ちゃんとあの人ごっちのこと考えてくれたんやん!』って一緒
に喜んでくれた。わー、やっぱり嬉しい。やっぱりバレてたんだ。恥ずかしい!
このことをみんなに言ったら『そりゃバレバレだったさー』って。どええ!

ふじこと授業で使う世界地図の大きいやつを職員室に取りに行くことになって、
いつも通りケラケラお話しながら職員室のドアを開けたら誰かが急に出てきて
ぶつかりそうになって、私が『わは。ビックリしたぁ〜っ』ってふじこと笑いながら
見たら、あの人だった。もう、わけわかんなかった。何笑ってるの、私。っていう
感じだったけど、笑っちゃっているものはもう止めたら不自然だし、笑ってた。
きっと2週間前の私ならすごく嬉しくてしょうがないと思うけど、今の私もやっぱり
嬉しかった。平気ってこと伝わったかな。笑いかた、不自然じゃなかったかな。
というか自分ではすごく不自然になっちゃったような気がしてきた。わわわ。

今はちょっとだけツライけど、あの人と彼女ちゃんのふたりがいるところを見るの
がすごーく好きになる日が来るような気がする。だって、大好きな人と大好きな人
の大好きな人だし。そんなに優しい気持ちになれるくらい、あの人も彼女ちゃんも
すごくイイ人だから、私もそれに負けないくらいイイ人であれたらいいなって思うし
ふたりに負けないくらい素敵な恋愛がしたいなって思った。できるかなぁ。

あゆみちゃんが『朝倉先生はどう?』って真剣な目をして言った。きゃーきゃー!!
朝倉先生は大大大好きだけど、ねぇ。あゆみちゃんカワイイ。

5月1日(水) もう5月なんだなぁ。

 

5月28日〜5月30日分のログ

5月16日〜5月25日分のログ

Back