頬にあたる風は日に日に冷たくなっている。電車から降りて、指先をカーディ ガンの袖口に隠しながら「寒いねっ」ってあゆみちゃんと笑った。駅の隣にあ るパン屋さんで、ワンちゃんの顔に作ってある「ポチ」というチョコパンをあ いちゃんと一緒に買った。可愛すぎて食べるのがもったいないや。

休み時間はベランダでタニミカと日向ぼっこ。ベランダから見えるうどん屋さ んの看板に向けて、太陽の光を鏡で反射させてみた。「向こうの山まで光届い たりして。笑」なんて私が鏡を上下に動かしてたら、届くわけないのに「見え た見えたよごっち!笑」ってタニミカが言ってくれた。いっぱい笑った。

廊下を誰かが通るたびに振り向いてしまう癖はこれからもきっと治ることはな くて、あの大きな背中を目で追わないでいることができる日もきっと来ないん じゃないかと思う。まだ好き?と聞かれたら「うん」とは答えないと思うけど 首を横にも振らないと思う。

国語表現の時間に「ごっちの書く字、むっちゃ好き!」って上野ちゃんや山ゆ かが言ってくれて、思いきり照れてしまった。「自分の子どもとか妹はごっち みたいな子がいい!」ってしおりちゃんが言ってくれて、また照れた。でも嬉 しいのにそうでないふりをしてしまった。ほんとに嬉しかったのに。

図書館からの帰り道。おなかすいたなぁなんて思いながら空を見上げると、ぼ んやりと星が見えた。つい最近までははっきり見れたのに、なんて思いながら 目をこすった。ただいまってドアを開けると、夕飯やお風呂のぽかぽかした匂 いに包み込まれる。ちょこっと幸せな気持ちになった。

日曜日、パックンにとあることでメールを送ろうと思います。今から緊張っ。 会えますように、会えますように。

10月30日(木) 晴れ

 

夜中の2時過ぎに届いた文面がむちゃくちゃのメールをタニミカに見せると 「なにこれ!読めん〜!酔っとるなぁ」って大笑いしてた。メール送信者であ る長尾くんはふらふらになって学校に来てて、それを見てまた大笑い。(ほん とは心配するとこなのだけど)飲みすぎたらいかんやん〜なんてみんなで言い ながら、こうやって騒げるのもあと少しなのかなぁなんて思った。

そうじ場所へ向かう途中、渡り廊下から見える中庭の大きな木。緑や黄色や橙 で何だか眩しかった。『すご!なんかカラフルやぁ!』って私がいうと、岩澤 ちゃんが「ほんまやぁ!絵の具で描くんとか大変そう!」って笑ってて、私も 笑った。つい最近までは緑と黄緑だけで絵の具足りてたのにね。

久しぶりにパックンがメールで「さーちゃん」って使ってくれて、久しぶりに 頬がかぁぁっと熱くなるのがわかった。ただの文字なのに。大学だとか入試の お話をしてても、いつのまにか映画のお話になっちゃう。マトリックス レボ リューションズ初日にみにいきたいねって言われたら、一緒に行こって言いた くなっちゃうよ。

勉強、友達、勉強、悩みごと、勉強、恋。

大きな行事もなくて単調なはずなのに、毎日まいにちはこんなにも楽しくて、 心地良く忙しい。一緒になってがんばれる友達がいるから、一緒になってほっ ぺが痛くなるまで笑える友達がいるから、ドキドキをくれる人がいるから。自 信を持ってそう言える気がする。

ドキドキをくれる人が おやすみメールのとき、またねって書いてくれてた。 何だかそれだけでもいっぱい幸せだ〜って思った。がんばろっ。

10月27日(月) 晴れ

 

「今日おれが来るん知ってた?」
『・・・ちょっと前に聞いてびっくりした。』
「なーんや知らんかったんか。笑」

ほんとは来ること知ってた。今みたいな気持ちじゃなかったけど、会って話し たいって気持ちが浮かんだの覚えてる。『会いたかったから今日来たんやんか ぁ』なんて言ってたらどんな顔したかなぁなんて思ってみたり。

大学に提出する自己推薦書を書くとき、自分を見つめ直さずにはいられないわ けで。だけど私から見た私は一部でしかないしとても偏っていると思ったので 周りの人に私のことを聞いてみた。普段はそんなこと聞いたりなんかしないか ら少し照れてしまった。

友達や先生からみた私はこんな風だったのかぁとか、そんな風に思っててくれ ているんだって何だか自分のことなのに誰かのお話を聞いている気分になって しまった。一番びっくりしたのはお母さんで、何だかほんとに照れた。怒られ たり、することなすこと呆れられてばかりだったのに、ちゃんと見ててくれて いるんだなぁと思った。ありがとう。・・なんて恥ずかしくて言えないからここ に書きました。やっぱ照れるや。

体育の疲れで、図書館で思いきり寝てしまった。恥ずかしい!パックンとメー ルしてるときは夜中でも眠くなったりしないのに。私って単純だ、と思った。

10月22日(水) 晴れ

 

たったひとことで、幸せになれたり安心できたり笑顔になったり。さっきまで 机に伏せてたのがうそみたいだって思った。いつもありがとう。12時過ぎて たのにお話聞いてくれてありがとう。でも頼りすぎてる気もするから、ちょこ っと控えないといけないなぁと思った。でもまたすぐに話したいなぁと思っち ゃうんだろうなぁ、私だけ。ぐすん

「バイバイ」っていうだけなのに、深呼吸をした。笑顔を作ってしまったって 思ったのは初めてかもしれない。大好きな友達なのに笑顔を作ってしまった。 もう半年以上も前に平気になったはずなのに、あのひとのことを好きだった毎 日のことはまだ少し思い出す。でも大丈夫。大丈夫。

毎日まいにちが楽しくて、楽しい分だけ寂しくなる。あゆみちゃんと話してた らしおりちゃんが「ごっちたちが見えたけん走ってきたよ〜」なんてやってき た。食堂まで降りながら「1年のときさぁ、来年も再来年の12月もこうやって 3人で話そうねって言ったん覚えてる?」ってみんなで話した。覚えてる〜っ てみんなで笑った。

今日はうじけちゃんがお休みしてた。岩澤ちゃんとタニミカと、パズル風にし て文章を書いてうじけちゃんにメール送信。休み時間中ずーっとメールしてて 「はよ授業行きやー」ってうじけちゃんに言われて慌ててみんなで教室に向か った。こんな普通の休み時間も、一瞬だって忘れたくない。

現社の時間に隠れて英語してたのだけど、ふと真面目に先生のお話を聞いてい たらすごくすごくいいお話をしてた。「これからの時期どんどんみんなの雰囲 気がぴりぴりしてくるだろうけど、そんときに支えあえる友達はほんものや。 不安やら何やで壊れそうになるかもしれんけど、そんなときは放課後の教室で みんなで思ってること全部口にしたらええ。それでみんなで星空見上げながら 帰るんや、ええなぁ青春や!」思わず大きく頷いてしまった。

あともう少し。もう少し。がんばる!

10月20日(月) 晴れ

 

廊下ですれ違ったはねちに「けんちゃんとこ?」って聞かれた。うんって答え ながら廊下の端っこまで小走りで向かう。ガラリとドアを開けると何人もけん ちゃんの周りに生徒がいて、タイミング逃したぁ〜と思って引き返した。個人 調書を問題集に持ち替えて今度は職員室に。そしたら鳩もっちは出張中だとか で結局分からない問題は分からないままになってしまった。

同じ大学を受けるって言っている人がいることを知ると何だか焦る。おまけに それがずっと前にちょこっと好きだった人だったりなんかして(今はもう普通 のクラスメイト君)思わず笑ってしまった。第一志望は違うとこみたいだけど ライバルだ。・・私のがおもいきり負けてるけど、がんばる。

兵庫にいたころ毎日遊んでた幼馴染のまみちゃんは、私よりひとつお姉さんで 今は大学生。久しぶりにメールをして、大学のことや一人暮らしのことなどを いっぱい教えてもらった。やっぱり先生に聞くよりどんな資料を見るよりも、 実際にこうやって聞くほうがずっとずっといいなぁと思った。いっぱい教えて くれてありがとう、まみちゃん。

パックンはもう物件探しとか始めたみたい。何だかほんとにいよいよだって思 う。私も続くぞー、ぜったい!まずは明日の模試を何とかしなくちゃだけど。 図書館通いの成果が残せますように。がんばります。

10月17日(金) 晴れ

 

電車のドアが開いて、すぅっとひんやりした朝の空気が頬にあたった。白い息 にならないかなぁなんて思いながら息を吐いてみた。同じ電車に未華ちゃんも 乗ってたみたい。私たち以外に誰も同じ学校の人がいなかったくらい早い時間 の電車。いつもの時間帯も朝からみんなで騒げて大好きだけど、のんびりでき るこの電車も同じくらい大好きだ。

国表の授業で、ひとつの絵から連想してグループで物語を作るという課題が出 た。それぞれ分担して仕上げてきた段落をグループ内で読み合いっこしてたら キエちゃんが「ごっちの班はごっちがおるけんメルヘンな感じやろー!」って 笑ってた。有ちゃんは「いやいや、恋愛モノやでぜったい!」って言い張って て、何だか照れるとこじゃない気がするけど照れてしまった。

閉館のアナウンスが流れたので帰る支度をして、どの曲聴きながら帰ろうかな ぁなんてMDを選びながら図書館を出ようとすると、後ろから女の子ふたりがも のすごい勢いで追い抜いていった。少しして嬉しそうな悲鳴があがった。頭を 掻きながら携帯を出してる男の子と、それを受け取るさっきの女の子。わぁぁ って思った。今日の夜はドキドキしながらメール送るんだろうなぁ。

気分がぽかぽかのまま家に帰ると、机の上に一枚の写真があった。それを見て 思わずうわぁと声を出してしまった。7年前の英会話教室での写真。にかって 笑ってるパックンの斜め前に、ほっぺを赤くした私が写ってた。「今日片付け てたら出てきたのよ。懐かしいよね、パックン君でしょ。」ってお母さん。

机の前に置いてみたのだけど何だか集中できないから、引き出しの中に入れて おくことにした。7年前からこんなに身長差があったんだなぁって思った。こ んな写真みつけたよ〜って私も今日の夜はドキドキしながらメール送ろうかな ぁって思った。

10月16日(木) 晴れ

 

傘にあたる雨音を目を閉じて聞いてみる。体育館に響く雨音は拍手のように聞 こえるから、傘にあたる雨音もそうだろうと思った。目を閉じて聞く雨音は拍 手のようには聞こえなくて、花火の日のことを思い出すだけだった。雨の日を 好きだと思ったのは初めてだ。夏を大好きになったのも今年が初めてだった。

まだ私の目は、ときどき大きな背中を追いかけようとする。廊下ですれ違うと き、食堂でパンを選ぶとき、移動教室の入れ替わりで同じ教室にいるとき。階 段の人から、ときどきメールが来るようになった。前よりも頼ってくれてるか なぁって思う。相談とかし合ってお互いにプラスになるようにしようって言っ てくれたこと、ほんとになりつつあるのかな。お互い、がんばろうね。恋に勉 強に。

花火の日からもう2ヶ月過ぎたんだよってことを伝えると、早すぎやねって言 ってた。クリスマス気分がどうとかってパックンが言ってて、何だかドキって してしまった。サンタさんをいつまで信じてた?って聞いたら、よくそんな恥 ずかしいこと聞けるなぁなんて言いながらちゃんと答えてくれた。笑った。

いろんな他愛ないことをおもしろおかしくずっと話せることが嬉しい。勉強終 えて寝るまでの少しの時間だけど、それでも嬉しい。私が寝る時間になると必 ず寝なくてだいじょぶ?って聞いてくれるとことか、何だか優しいなぁと思っ てしまう。

気持ちが伝わってほしいだとか、私のことどう思ってるんだろうだとかと考え てばかりじゃない恋をするのは初めてかもしれない。今、がすごくすごく楽し くて幸せ。いつもありがとう。おやすみなさい。

10月14日(火) くもりのち雨

 

夏休みに買ったファイルだとか、春から使ってた単語帳だとか、可愛い絵柄の ペンケースだとか。少し端っこが折れてたり、独特の擦れや古びた感じがでた りして何だか少しだけ嬉しくなる。私の物って印。がんばったって印だから。

鳩もっちのところにプリントの解答をもらいに行くと、ほんとによくがんばっ てるわねぇと独特の口調でとびきりの笑顔をもらってしまった。私が他の子の ほうがすごいですよと言うと、最近のさやかちゃんからは何か熱意を感じるの よって先生はまた笑顔で言ってくれた。何だか照れてしまった。

以前パックンのいる高校に勤めていた先生と話す機会があって、パックンのこ とを聞いてみると「知ってる知ってる!」なんて大きな声で笑ってた。ちょこ っとだけパックンのことで語って、最後に「知り合いなんですよー、ただの友 達なんですけど」って言った。「でも好きなんですけど」って心の中で付け足 してみた。

明日は卒業アルバム用の学年集合写真を撮るみたい。いつもの4人で一人ずつ 手を広げて"L,O,V,E"の文字作って撮ろうねなんて笑った。卒業アルバムが 完成するころには、みんな揃って笑顔でいることができますように。

毎朝、パックンと同じ高校に通ってる男子とすれ違う。中学のとき同じクラス だった人だからいつもバイバイってするのだけど、そのひとが今日から冬服を 着てた。バイバイをしてから何となく振り返って、パックンもあの制服着てる のかぁなんて思ってみた。・・会いたいなぁ。

10月9日(木) 晴れ

 

もしかしたら11月頃に会えるかもしれないってことを話すと、ずいぶん先だ ねって氏家ちゃんが笑った。椅子を斜めに傾けて、壁に背中をぺたっとつけ た。不思議とずいぶん先だっていう感覚はなかった。高校も家も離れてるか ら、会えるかもってことだけで嬉しさが溢れかえっちゃいそうだ。

動き辛いけど携帯ポケットに入れておくことができるのはいいよね、なんて言 いながらブレザーの裾を引っ張ってみた。ほんとはブレザーなんて着たくなか った。ずっとずっと、夏が終わらないでほしいと思った。「浴衣着てくるんか なってちょっと期待したのに」なんて言われたけど、あの日来てたノースリー ブの服は私の中で少しだけ特別なものになったんだよ。

傘で視界を覆ってみた。髪に、頬に雨を感じた。花火を携帯のカメラで撮ろう とする私の視界を意地悪ぽくそれまで差してくれていた傘で覆われたとき、不 思議と雨を感じなかった気がする。思い出だからなのかな。思い返せば思い返 すほど、曖昧になって、素敵なものになってく気がする。意地悪いっぱい言わ れたはずなのに、隣にいたパックンは全部笑顔になっちゃってる。

学年集会でのお話や、担任の先生からのアドバイスや体験談、志望大に通って いる先輩からの応援メール。カレンダーはどんどん斜線で埋まってく。夏休み ころに赤ペンで大きく丸を書いた願書受付開始の日。ずっと先のことみたく思 ってたのに。

11月に会えるかもしれないこと。やっぱりずいぶん先なんてことはなくて、ほ んとは嬉しくなったり悩んだりなんてしている時間は私にはない。だけどそれ でも離れようとしなくて、離したくないなぁと思う気持ち。伝えたら少しは楽 になるのかな。いつか、伝えられるかな。

雨上がりの空はとっても瑞々しくて、もやもやしてた心がすぅーっと軽くな る。どこかに虹が出てないかなぁなんて思って見上げると、すぅーっとひんや りした優しい風が頬にあたった。気持ちを入れ替えて、がんばろう。

10月6日(月) 雨のち晴れ

 

小学生の女の子たちが金木犀を小さな両手から溢れさせていた。私も同じ頃、 幼馴染のまみちゃんとよく庭にしゃがみこんで「香り玉にしようよ」なんて言 いながらポケットに、ポーチに溢れさせてたのを思い出した。

日曜日の図書館はいつもたくさんの人がいるのだけど、週を増すごとに増えて いる気がする。そのほとんどは私と同じ受験生。開館30分前に着いたのに、既 に道路のほうまで列が出来てしまっていた。その中に何人か友達や中学のとき の同級生をみつけて、その度に手を振って笑った。

この前パックンと、小学校のときだけ同じ英会話教室に通ってた「こーじ君」 のことについてメールで話したのだけど、そのこーじ君を図書館で見かけた。 見るのなんてほんと小学校以来だったのだけど、面影がそのまま残っていて本 人だと思った。そのことをパックンに教えると、すごい偶然やなぁなんて言っ てた。

この前カズくんがパックンと電話したみたいなのだけど、そのときに私の話題 が出たみたい(カズくんが教えてくれた)。どんなお話したのかすごく気になっ た。ふたりは本当にずっと仲良しで、色んな相談とかし合いっこするみたい。 私にもいろいろ相談してほしいなぁって思った。

10月5日(日) 晴れ  秋休み、今日でおしまい。

 

おしゃれな友達と放課後の街に買い物へ出かけたり、電車を待つ間キエちゃん と空を見上げて雲の流れを眺めたり、窓を開けて金木犀の香りを胸いっぱい吸 いこんでみたり。どんなことにも「最後」という言葉がひっついている気がし てしまう。そんなはずはないのになぁ。

明日はお母さんの誕生日だから、今日は図書館へ行かずに朝から家中をぴかぴ かにしてみた。テレビの下や台所の油っぽいところなんかを磨いただけなのだ けど。明日はいつもの雑貨屋さんでプレゼント選ぼうと思う。喜んでくれます ように。

秋休みに入る日の夜、クラスのみんなで焼肉食べに行った。みんな話に夢中に なりすぎて焦がしてばかりだったのだけど、ほんっと楽しかった。いろんなも の混ぜすぎてすごい色で異臭のするジュースをみんなで飲んだり、植村くんの 眼鏡外したところをみんなで写メ撮ったりだとか。本当楽しかった。

こんな風にみんなで騒げるのも、受験前では今日が最後だねって話した。袖の 部分を2回折って裾をピンで留めてた夏服も、もう着ることはない。あたりま えに季節が、時間が過ぎていくから置いてきぼりになってしまいそうだ。

パックンも感動する映画だとか本が好きみたい。のんびり好きなことについて お話できるのって何だか嬉しいし心がとっても落ち着く気がする。映画撮影が いつあるのかを聞いてくれたみたいで、どうやら少し先とのこと。またおすす めの映画や本たくさん教え合いっこしようね。

10月2日(木) 晴れ

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