ビデオをちょこっとだけ巻き戻すみたく、もう一度だけ水色の服着た背の高い 人を見た。すっかり目が悪くなってしまってはっきりと見えなかったから、そ のときはまさかなぁなんて思っていた。だけどそのあと何人か隣のクラスの男 子をみかけたから、やっぱりさっき水色の服着てたのは階段の人だったんだっ て思った。先週の日曜日、図書館でびっくりしたこと。

好きな人は「自分をしっかり持っている子って魅力的だ」なんて言っているの に、私は好きな人に影響されて趣味がころころと変わってしまう。パックンの おすすめで映画や本をたくさん観たり読んだりするようになって、気持ちの持 ちかたまで以前とすっかり変わってしまった気がする。もちろんいいほうに、 かな。

ぬいぐるみ ほしいほしい言ってたら、私が大学に合格したらやるよって言っ てくれた。やったぁ〜って何度も言ったのは ぬいぐるみがほしいのももちろ んあるけど、また会えるんだって嬉しくなったから。きっとそんな気持ちもお 見通しなんだろうけど、今日も気付かれていないふりをした。

今週はテスト期間で学校帰りにお昼から夜までずっといた図書館が、来週はず っとお休みするみたい。とっても大きなガラス越しに、だんだん色を染めてい く空を見ながら勉強するのが好きなのに。いつも同じ席に座っているおじさん やよく同じテーブルになる近くの高校生たちは、来週のこの時間をどこでどん な風に過ごすのかなぁなんて思ってみた。

クラスページ(卒業アルバム)の写真加工を担当してるのだけど、完成途中のを 見てみんなが笑顔になってくれるのがとっても嬉しい。月曜日には完成できる と思うから、またみんなが笑顔になったらいいなぁって思う。

11月29日(土) 雨

 

「がんばれよ、おまえならやれる!」なんて、呼び方がいつのまにか"おまえ" になってた。少しだけ寂しいような、くすぐったいような。夜でも街にたくさ ん人がいるよって教えたら、いいとこだなぁ。大学入ったら遊びに行くから! って言ってた。だから代わりに私が東京に遊びに行ったときはディズニーシー 連れてってねってお願いしてみた。まかしといてって笑ってた。

パックンだけじゃなく、いろんな人が応援してくれた。いっぱいメールが届く たび、これは受からなくちゃなぁって思った。前日に同じ大学を受けたみのく んが面接でどんなこと聞かれただとかお昼食べるとことかいっぱい教えてくれ て、何だかちょこっと感じが掴めて安心できた。いっぱいありがとう。

私の席はいちばん前のいちばんドア寄りだった。英語の試験を終えて面接まで の時間、ひとりで退屈だなぁ〜って思ってたら受験番号が近かった女の子が話 しかけてくれた。何だかすぐに意気投合して、一緒に中庭の階段で座ってずー っとお話した。いっぱい笑いすぎて、緊張感なくなっちゃったねってまた笑っ た。

おりちゃん(その女の子)が面接会場に行ってしまって、またひとりになっちゃ ったら今度は横の席の男の子が話しかけてくれた。試験は鉛筆でって書いてあ るのに私がシャーペンしか出してなかったからおれの鉛筆貸してあげようって 思ってたんだぞとか言ってて笑った。

おりちゃんも横の席の男の子も、私の話す方言が可愛いって言ってくれた。で きるだけ標準語で話してたつもりだったんだけど、やっぱり出ちゃうんだなぁ と思った。他にも同じ面接グループだった人とも仲良しになって一緒に駅まで 帰ったりした。ライバルなのに、いっぱい友達ができた。

試験も面接も、自分のベストをつくせたと思う。英語は夏休みからずっとずっ と図書館でがんばった分だけ結果が残せたような気がする。とにかく今日は自 分にいっぱいお疲れさまって言いたい。応援してくれた友達に、明日はいっぱ いありがとうって伝えたい。

明日からまた、がんばらなくちゃだ。

11月20日(木) 雨

 

誰もいない教室。ベランダへ出ると同時に、自分の息で視界が真っ白になっ た。手すりに反射した朝日に目を細めながら、ちょこっと思い出に浸ってみ る。去年はうめさんとここでよく恋の大作戦考えてたなぁとか、春はここでタ ニミカに好きな人教えたなぁとか、いろんなこと。

岩澤ちゃんがポケットから手渡してくれたのは、淡いピンクのお守りだった。 「これでばっちり受かるけん!」なんて言ってくれて、思わず目の奥がジンと した。いっぱいありがとうって言って、一度だけお願い事をするみたく両手で ぎゅっとお守りを握って、ポケットにしっかりしまった。

入試と検定と卒業アルバムのクラスページ締切と中間テストがこの2週間に詰 まっていて、目が回りそうってこういうことなんだなぁと思った。どれも疎か にできないから、きちんとやり遂げたい。やっぱ1番は入試だけど。緊張して きた、ほんっとに。

明日の夜は、パックンにい〜っぱいお話聞いてもらおうと思う。入試前日の緊 張も、きっと簡単に解れちゃうんだろうなぁなんて。気がつけば花火の日から 3ヶ月が過ぎていて、もうすぐ会えるかもしれない日が近づいてた。

11月18日(火) 晴れ

 

空をキャンバスに どこかで誰かが絵を描いているんじゃないかと思った。卒業 アルバム用に持ってきてたデジカメのシャッターを切った。それまで一緒に大 笑いしてたタニミカも「きれいやぁ〜!」って見上げてた。どの空も好きだけ ど、今日の空も好きだなぁと思った。

小さな焼きたてパンをひとつ買ってお店を出ると、階段の人たちがすーっと自 転車で目の前を横切った。なんとなく目が合って、なんとなく逸らした。なん となくいつもよりも速いペースで駅に歩いた。このぐるぐるした気持ちは、こ れからもずっと続くのかな。

電車でいずみちゃんと一緒になった。日差しだけが届いて、車内はちょこっと だけ温かい。いずみちゃんとは休みの日に時々図書館で会うから、実は家がと っても近いのかなぁって思う。そのことを話そうかなぁと思ってたけど、入試 と恋のお話を途中までしたところで駅に着いてしまった。

図書館のロビーで飲むコーヒーがとってもおいしく感じる。100円のやつだけ ど。あんなに苦手だったのに、いつのまにか飲めちゃうものなんだなぁと思っ た。明日もし図書館にいずみちゃんがいたら家のこと教えてもらおうと思う。 近かったらいいなぁ。

この前の日記を書いた次の日。「11/11 11:11」にもメールできた。その あとも休み時間に何通か送り合いっこして、ラーメン食べてただとか知れただ けで何だか嬉しかった。いつでもメールしてくれなんていうけど、送るだけで も勇気がいること、パックンは知ってるのかな。

11月14日(金) 晴れ

 

みんなの笑い声の中に、ふわぁっと白い息をみつけた。「肉まん食べたい!」 「銀だこがいい!」なんて温かい食べ物のお話をしながら、久しぶりの曇り空 を眺めた。さぶいねって笑いながら廊下にスリッパの音を響かせて走る。その 瞬間のひとつひとつが楽しくて、同時に少しだけ心細くなる。

放課後の面接練習が近づくにつれて落ち着きがなくなっていると、みんなが一 緒になって予行演習してくれたりだとか、恐い面接官のふりをしてくれたりし ていっぱい笑わせてくれた。何だかほんとに支えてもらってばかりだから、私 も何かみんなの支えになれたらって思うのだけど、なかなかだ。

面接練習は私ひとり緊張している感じで恥ずかしかったけど、すぐに真っ白に なってしまう頭をフル回転させてがんばった。一緒のグループの中にはずーっ と前に好きだった人もいたのだけど、全然普通に話せてよかった。たぶん2年 前の私ならドキドキしてたんだろうなぁって思った。

外はすっかり真っ暗になっていた。お昼に降ってた雨が残した水溜りに 傘をす ーっと通しながら、同じ面接グループだったゆみちゃんとお話しながら駅まで 向かった。卒業まであと何日学校に来るのかなって、ひとつひとつ数えた。最 後の数字を言い終わる前に、卒業したくない〜って言った。また白い息がふわ ぁってなった。

ディスプレイにはいつのまにか「11/11」の文字。

 
−あ、今日ポッキーの日だ。日付1がいっぱいだね

"ホンマやなじゃぁ1時11分までもう少しやね"

−わ、じゃぁそれまで起きとこ?そういうの好きなんだけど

"しょうがないっすね〜!なんかかわいい"

−パックンちゃんと送ってね〜

"はいはい 寝たらごめんな"

−寝たらいかんよ なんか楽しくなってきた

"そりゃよかったなあー眠いなぁ"

−あ、無理せんでかまんよ

"からかっただけだよ もうすぐ。"

何だか幸せいーっぱいになった。小さなことが、とってもとっても嬉しい。いっ ぱい幸せをくれてありがとう。おやすみなさい。

11月10日(月) 雨

 

お弁当のあと歯磨きしてたらジャスミンと一緒になったので、そのまま廊下に 出てふたりでお話。入試のことや成績のこと、それから恋のこと。久しぶりな 分だけ話したいことがたくさんあって、25分の休み時間は短すぎるなぁと改め て思った。

最近は友達と相談したりちょこっとしたことで笑いあったりするのがとっても 好きだ。前から大好きだったけど、みんなと過ごせるのもあと少しなんだと思 うと余計に大切な時間になる。そうじの時間に「合格したらいつもの4人で焼 肉行ってカラオケ行ってプリクラ撮って遊びまくろうなぁ」って岩澤ちゃんと 笑った。ほんとに実行させようね。ぜったいぜったい。

毎日誰かが入試だったり合格発表だったりで、クラスの中は慌ただしい。合格 したよ〜って嬉しそうな顔を見て私も嬉しくなるのだけど、同時にとっても不 安になる。ほんとに不安やら悩みごとで押しつぶされちゃいそうになるのだけ ど、でもここが踏ん張り時。

渡り廊下や正門の近くを通るときに、ときどき階段の人とのことを思い出すよ うになった。思い出して温かい気持ちになれる思い出があることが何だか嬉し い。いっぱいがんばった分だけ、いっぱい嬉しいことがあった恋。今はたぶん 言えないけどいつかもう1度だけ階段の人にはありがとうって言いたい。

明日は卒業アルバムに載せるクラスページ用の写真を撮るみたい。思いきり笑 顔で写っちゃおうっと。完成が楽しみ。ワクワクワク。

11月6日(木) くもり 11月なのに暖かい!

 

夜の11時半を過ぎると覚えているはずの英単語も文法も思い出せなくて、ふぅ と息を吐きながら大きく伸びをした。照明をぱちんと消して、ごろんと横にな る。問題集をどんどん進められるほど目は覚めていないけど、パックンとのメ ールを続けられないほど眠くもなかった。

たとえば今聞いているCDのことだとか、最近ちょこっとはまっていることだと か、どんな小さなことでも教えてもらえるのがとっても嬉しい。色んなことに 挑戦していて、私にないものばかり持ってる。話せば話すほどいいなぁ、すき だなぁと感じると同時に、私には何か自信を持って得意だといえるものがある かなぁなんて少しだけ目を閉じたくなる。

何度か眠い?って聞かれたけど、その度に大丈夫だよって言った。その度にお れも大丈夫って言ってくれた。いつのまにか恋愛のお話になっていて、パック ンは冬近づいてきたから彼女ほしいなぁなんて言ってた。そういえば前に階段 の人もこんなこと言ってたなぁと思って何だか泣きそうになった。

いつもののりで立候補でもしてしまおうかと思ったけど、ほんとの気持ちなの に冗談になってしまいそうだからやめておいた。それからちょこっとだけ恋愛 のお話をして、3時前になってさすがに眠くなったからおやすみをした。でも 何だかすぐには眠れなかった。

最近、課題研究のプレゼンや面接の模範回答を作成するためにパソコンの前に 座ることが多くなって、目がすごく疲れやすくなった気がする。今日は雨だか ら行かないでおこうと思ったけど、やっぱり図書館へ行ってこようと思う。図 書館は自然がいっぱいな感じで大好きだ。帰りは大好きな岩澤ちゃんへのバー スデープレゼントをいつもの雑貨屋さんで選んでくるつもり。ワクワク

今からお昼食べます。パスタだって。やったーぁ

11月3日(月) 雨

 

携帯片手にきょろきょろと観客席を見渡す。たくさんの人の中に菊さんをみつ けて階段を走らないように、でもなるだけ急いで駆け下りた。菊さんがとって おいてくれた席は真ん中の前のほうで観やすそうだったから、早く始まってほ しいなぁってわくわくした。

大好きなうじけちゃんも出演している「ロミオとジュリエット」の公演。今ま で大きな演劇や舞台を見たことがなかったのだけど、始まった瞬間からすっか り引き込まれてしまった。ルパムは一緒に踊りたくなっちゃうくらい可愛くて 見ていて自然と笑顔になった。

夜の公演もお金があったら見るのになぁなんて思いながら、菊さんといっぱい 感想語り合いっこしながらホールを出た。うじけちゃんとなっちに、学校でル パム踊ってもらおう〜って笑った。久しぶりに菊さんともいっぱいお話できて 嬉しかった。今日は招待してくれてありがとううじけちゃん。そしておつかれ さまです。ほんとに!

ホールから駅までの道のり。何となく振り返った反対車線は、人込みを掻き分 けながらみんなで花火の見える絶好の場所を探しに走った歩道だった。ほんと は目を腫らして両手で耳を塞いで過ごすはずだった夜を、ずっとずっと笑って 過ごせたこと。忘れることなんて絶対できないよ。

『あの場所で花火見たん!写メ撮っていい?』って言うと菊さんは大笑いしな がら「撮りぃ〜!」って言ってくれた。私の中だけの、大切な思い出の場所。 パックンもこの歩道を歩いたら、思わず写メを撮りたくなったりはしてくれな いかな。何となくあの日のことを思い出して、温かい気持ちになってはくれな いかな。

私と同じ目線になるように背を屈めて「こんなんじゃ何にも見えんやろ」と笑 ったこと。花火の写真を撮ろうとする私の視界を、差してくれていた傘で何度 も邪魔をしたこと。あのときは「もう!」って本気で怒ったのに、今では何だ か思い出すと笑顔になっちゃうよ。

花火が咲いたほんの少し雨模様だった空は、高く高くなった。会いたいなぁと いう気持ちも大きくなるばかり。伝えても気まずくならずに笑ってくれると分 かるのだけど、やっぱり今日も伝えられなかった。素直になりたい。

11月1日(土) 晴れ

Back