小学校のころのアルバムに綴じられずに挟まっていた2枚の写真。ほんとに このまま大きくなった感じだなぁなんて思いながら、端っこと端っこだけど 同じ写真の中に写っていることを嬉しく思った。その場所は夏に3年ぶりに 会い、クリスマスに一緒に見上げた大きなツリーがある公園だった。写真の 中の私はまたこの場所で会えること、知っていたのかな。

「制服着てられるんもあと4日やでっ」と、教室のドアを開けてぽっかさん が笑ってた。文集の編集後記を書いていた手を止めて、岩澤ちゃんとほんま やぁって言った。この文集がみんなの手元に渡るときには、なんて考えたら 何を書けばいいのか分からなくなってしまった。

橙色の光が斜めに自転車小屋を縁取っていた。うじけちゃんと青春やねって 笑った。ほんとにきれいな橙色をしているなぁと思いながら光のほうにゆっ くりと目をやると、階段の人がラケットを握りながら笑ってた。受験お疲れ さまって春みたく気軽にはメールを送ったりできないけど、そう思った。

パックンの心を掴んで離さない りさちゃん に少しだけやきもちを焼きなが ら、のんびり読んだ本のことだとか春からのことだとかを話した。(私も読 んでいいなぁとは思っていたけど、りさちゃんだなんて呼ぶことないじゃな いかぁ)春からのことはまだ少し考えたくないけど、でも、きっと大丈夫。

久しぶりに英会話教室の先生と話す機会があった。「そういえばあの子も進 路決まったみたいよ」とパックンのことを言っていたので、夏に会ってから のことを少しだけ話すとびっくりしていた。「偶然に会ったの?まぁ。」だ なんて勝手に話が進んでしまったのだけど。

いつか約束してたゴロ(犬)の写メを撮ろうと思ったのだけど、暗くてただ真 っ黒なものが写っただけだった。スカートだったけど小学生のころみたくし ゃがみ込んで、ゴロを思いっきりぎゅってしながら頭を撫でてみた。今度は パックンと一緒に先生のところに来れたらいいなって思った。

2月27日(金) 晴れ

 

気になりはじめたばかりだったひとが仲良しの女の子と自転車小屋から歩い て出てきているのを見て、思わずしゃがみ込んでしまった3階の廊下。もう 平気だよと言い聞かせるようにバイバイと笑った正門や、大きすぎて背を向 けずにはいられなかった教室の窓。

小さな恋の終わりの場所は通り過ぎるだけで胸がぎゅうっとなったけど、見 かけることももう簡単にできなくなるんだと思うとまたぎゅうとなる。また あの廊下でしゃがみ込んでみようかななんて明日はうじけちゃんたちと学校 へ行くつもりだったのだけど、どうやら試験期間で入れないみたい。

昨日は本を返すためだけに久しぶりに図書館へ行ったのだけど、ふわっと独 特の匂いがしてやっぱり私はここが大好きなんだなぁと思った。コーヒーを ゆっくりと飲む時間はなかったけど、また時間をみつけて来たいと思った。

好きなひとがいいねと言っただけですっかりお気に入りになってしまったバ ッグには、今日も飴とチョコが少しずつ。「いつもお菓子入ってるね」って 私があげたチョコ(バレンタインじゃないよ)を食べながら笑ってたのが何だ か嬉しかったから、それからずっと。

2月25日(水) 晴れ

 

いつだったかプレゼントした本を、ゆっくり読み始めたよと教えてくれた。 気に入らないものははっきりと言うひとだから、なかなかおもしろいと言っ てくれて嬉しいなぁと思った。何度も読み返した本で、お気に入りの一冊。 パックンは読み終えたあと、どんな気持ちになるのかな。

定食屋さんの開店前に周りの植木に水をあげていたのだけど、そのときに小 さな小さな虹が小さい水の粒のなかに円を描いているのをみつけた。その向 こうで葉が気持ちよさそうに揺れていて何だか嬉しくなった。明日は進んで 外回りの仕事をさせてもらおう。

最近はずっと同じCDを繰り返し聴いている。それは買ってからもう1年近く 経つのだけど、久しぶりにかけてみると何だかとても心地良く感じた。好き な曲は数えきれないほどあるけど、こうしていつ聴いても心地良く、繰り返 し聴きたくなる曲こそ本物なのかなぁと思った。

そんな大好きな曲を聴きながら、寝るまでの少しの時間メールでお話する。 小さな小さな不安はたくさんあるけど、今こうして好きなひとと好きなこと を話せることがとても嬉しいからひとつずつゆっくり解決していきたい。そ れにしてもパックンはほんとに夜更かしさん過ぎて何だか心配。

あんまり無理せんようになだとか、必ず何かひとことを付けておやすみを言 ってくれることを今になってすごく嬉しく感じるようになった。そのときに 一番ほしい言葉をいつも言ってくれているような気がする。そんなさり気な い、でも温かい言葉を自然に言えるようなひとに私もなりたいと思った。

明日は夕方からゆっくり時間があるので、久しぶりに図書館で勉強しようと 考え中。入学説明会のときにさっそく試験があるみたいだし。耳をすませば に出てくるような裏道を貫けて、ふかふかのソファでいつものコーヒーを飲 んで。何だか楽しみになってきた。

2月23日(月) 雨のち晴れ

 

こちらのお写真でよろしいですかとお店の人が見せてくれたのは、まだ長袖 ブラウスを着て笑っているみんなだった。つい半年ほど前なだけなのに、と ても懐かしい気がした。もう長袖ブラウスの制服を着たみんなを見ることは できないんだなぁなんて思いながら、はいと小さく頷いた。

お手伝いしている定食屋さんへ行くまでの大通りから少し外れた通りに、と てもおしゃれな雰囲気のカフェをみつけた。どうやらお菓子作りの材料もた くさん売っているみたい。いつも帰りに寄ろうと思うのだけど、定食屋さん の制服を着ていたり制服の入った大きなバッグを持っていたりするから、い つもただ前を通り過ぎるだけ。今度は時間のあるときに行ってみよう。

「メールじゃあ気持ちは伝わらないけど、おれは本気なんだぁ」と、これが 告白ならどんなにいいだろうと思うほど熱く夢を語ってくれた。したいこと が多すぎて何が得意だと言い張れるものが何もないと夏に言っていたけど、 これだと言い張れるものみつけられたみたいで私も嬉しくなったよ。

何枚焼き増ししようかメモしながら一枚いちまいアルバムに綴じていった。 当たり前だけどその中にパックンはいなくて、少しだけ不思議な気持ちにな った。そういえばプリクラも撮っていないし、花火やクリスマスツリーを写 メで撮り合いっこしたときもパックンの写真は撮らなかった。

それでもパックンの笑った顔だとか、字幕も見えないかもって目を擦りなが らしてた苦い顔だとか、窓側の席でコーヒー片手に茶色いブックカバーをし た小説を読んでた姿だとか、ちゃんと思い出せる。写真では表せないような 温かいもの、ちゃんと。

メールだったのに、夢を語る姿が眩しく感じた。ほんの少しだけ、遠くなっ てしまったように感じた。でも、話してくれることがとてもとても嬉しい。 これからもずっとずっと夢だとか今日みた映画のことだとか、どんな他愛の ないことでも話してほしいなぁって思うし、聞いてほしいって思う。それを 素直に伝えることができたら、どんなにいいだろう。

ずっと図書館で借り放してた本の返却を催促する葉書が届いてしまった。す っかり忘れてた。おしゃれな雰囲気のカフェは今度にして、明日は久しぶり に図書館へ行かなくちゃ。おしゃれな雰囲気のカフェ、コーヒー好きのパッ クンといつか行けたらいいな。

2月21日(土) 晴れ

 

星はいつか見上げたときみたくまだきらきらしていたのに、はぁと大きく息 を吐いてみても白いふきだしは浮かばなかった。冬の空までも、だんだんと 春に近づいているんだなぁ。だんだん大きくなる自転車の音に振り返ると、 あいちゃんがこちらに手を振っていた。少し大きく息を吸い込んで、久しぶ りって笑った。

中学のとき同じクラスだったまりこの家でお泊り会。進路の決まった子たち だけでだけど、小さな同窓会みたいでとても嬉しかった。布団を部屋一面に 敷いて、みんなでごろんと転がって笑った。布団の中であいちゃんと最近の 恋について語りっこしながら、何だか修学旅行みたいだって思った。

パックンがすごく夜更かしさんだからいつのまにか私もすっかり夜更かしさ んの仲間入りをしていたみたいで、みんなが眠ってしまってからもなかなか 眠ることができなかった。どうやらまりこも眠れなかったみたいで、真っ暗 な部屋の中で小さな声でお話をした。

高校のこと、恋愛のこと。まりこが「大ちゃんのことは、もう平気なん?」 と訊ねてきた。ゆっくり目を閉じて、ゆっくり息を吸って、「うん」って言 った。大ちゃん(私は"よしたけ"って呼んでた)は私が中学のころずっと好き だった人。まりこが覚えててくれたことが、とっても嬉しいなと思った。

たくさん思い出話をしたあと、2時過ぎにおやすみを言った。それでもやっ ぱり眠れなくて、夜更かしさんのパックンにさっき撮っておいたまりこの家 の「みぃ」の写メを送ってみた。そしたら可愛いだとか最高だとか書かれた 返信メール。犬猫好きのパックンならそう言ってくれると思ったんだ。

まりこが作ってくれたお昼(朝はみんな寝てた)をみんなで食べたり、なおち ゃんの変顔をみんなで写真撮ったりしながらのんびり過ごした。お昼過ぎに 宮田くんと岩ちゃんが遊びに来て、まりこがどこからか引っ張り出してきた 懐かしいダンスダンスレボリューションをみんなで勝負して大笑いした。ク ラスで一番背の低かった岩ちゃんは私の背を越していて、男の子ってすごい なぁと思った。

ジョイフルで夕飯を食べながら、今度は中3のときのクラス全員を呼んで同 窓会したいねって話になった。まりこが私のペンを使って紙ナプキンに誰と 連絡取れるかなぁなんて名前を書き出してた。「大ちゃん」と私の名前をハ ートの線で繋ぎながら「会いたいでしょ」ってまりこが笑ってた。どうだろ うって、私も笑った。

よしたけへの恋の思い出は、鮮明にではないけどひとつひとつ思い出すこと ができる。目が合うだけで、声が聞こえるだけでいちにち幸せになれてたよ うな小さな小さな恋だったのだけど、とてもとても大切な思い出だ。そんな 風にずっとずっと大切に思える思い出を、今は、パックンと作っていけたら いいなって思う。

2月19日(木) 晴れ

 

"まあまあおいしかったよ"

−まあまあってがんばったのに甘いの平気だった?

"これからの期待もこめてさおれ甘いの好きやで"

−わぁ期待しててケーキ作りの先生とかなってるかもだよ

"いいねぇ、そーゆーの好きだよ"

 
これからの期待って、これからもまた何か作ったら食べてくれるということ なのかな。文字だけだとニュアンスが伝わりにくいけど、伝わりにくさを味 方にしてそう思うことにしてみた。ずっと"これから"があってほしいから、 ずっとおいしいって言ってもらわなくてもいいや。(ほんとはやっぱり言っ てほしいけど)

「ちょっとでも何か気持ちに進展があったり、嬉しかったり不安だったりす ると、ごっちの顔が浮かぶん。ごっちに話したいって思う!」ってあゆみち ゃんが言ってくれて、嬉しいなぁと思った。家庭学習期間に入ったから前み たく毎朝電車で話すことはなくなってしまったけど、最近は毎日のように電 話でお話してる。

お互いに一番大切だねって言い合える友達がいること、すごくすごく幸せだ なぁと思う。電話で沈黙が続いても不安にならないこと。今こんなことを考 えているんだろうなって伝わってくる。「なんか10年後もずっとこうやっ て恋愛のことばかり話してそうだよね」ってふたりで笑った。

パックンと一緒にいるときの安心感は、あゆみちゃんと一緒にいるときの安 心感と少し似ている。昨日一緒にいて、気付いたこと。話しているときはも ちろん、黙っているとき(といってもパックンが難しい質問なんてするから) も全然不安にならなかった。

前に一度だけ、一緒にいて楽だって言われたことがある。そのときはあんま り嬉しくないなぁと思っていたけど、今は私も同じこと思っている。やっぱ り私はありきたりな言葉でしか表せないけど、一緒にいるととっても素直な 自分を出せてる気がする。リラックスできて、心地いいなってそう思った。

2月15日(日) 晴れ

 

パックンが電車に乗り遅れた時間分だけ駅前広場のベンチに座って待つこと にした。4月半ばの気温まで上がると天気予報が伝えていた通り、目を閉じ ていてもぽかぽかした日差しを感じることができた。このままだと寝ちゃい そうだと思って頬を冷やしながらキヨスクに入った。どの雑誌を見てもチョ コを渡すタイミングなんて載っていなくて、ほんとどうしようって思った。

着いたよってメールが入ったので背伸びしながらたくさんの人の中にパック ンを探していると、目の前をすぅっと知っている人が通っていった。通り過 ぎようとしてたから「もう」と言うと意地悪ぽく笑って振り返ってくれた。 やっぱりワザトだったんだって思った。

「チョコって初めに渡すものなんかなぁ」とかってパックンに訊いてしまっ て何だか恥ずかしくてしょうがなかったのだけど、またスタバにでも入って ゆっくり話そうって言ってくれて嬉しかった。途中、ドコモショップに寄っ てパックンの新しい携帯をどれにするか選んだ。パックンの携帯は本当に初 期化された状態になっていて、やっぱり少しだけショックだった。

スタバで向かい合わせになってお話してたらパックンがいきなり「しゃべり 場しよ!何か語ろうで?」って言ってきた。私は自分の考えだとか思ってい ることを話すのが大好きだからもちろん賛成した。テレビみたく深い題では なく、身近な題を出し合いっこしてお互いにワザト反対意見を言ったりどん どん質問したりした。

私は考えていることを言葉に表すのが下手で(でも誰かに自分の考えを伝え るのは本当に好き)フラペチーノを両手で持ったままずっとあたふたしなが ら考えを頭の中で整理していたら、パックンはじーっと私を見ながら大笑い していた。考え中なのって怒ったら、分かってるよってまた笑ってた。

いつのまにかパックンはフラペチーノを全部飲み終わっていて、私のはまだ 半分以上残っていた。ここじゃぁ周りに人おって話せれんけん外持って飲 み?んで話そうでって言ってくれたのだけど、大丈夫って言って残ってたの を飲み干しておいしかったって言った。やっぱりパックンは笑って、んじゃ ぁ外でさっきの続き話そうなぁって言ってた。

さっきまでのぽかぽかはどこかへ行ってしまって強い風が吹いていたのだけ ど、風なんてあんまり気にならないくらいいっぱい話していっぱい笑った。 「おれ、学校の友達にはここまで深く自分の考えとか言ってないかもしれん なぁ」って言ってて、嬉しいなぁと思った。

教習所の予約をしているみたいで3時ころまでしか会えない予定だったのだ けど、時間は過ぎてるのに雨宿りしようって言ってくれてどこかのお店に入 った。でもそこは雰囲気からしてとても高級なところで何も買えないから、 待合室みたいなところのふかふかソファに座ってお話しすることに。

私が自分の考えをゆっくりとひとつずつ話していると、パックンは私の目を じーっと見てきた。相槌もなにも打ってくれないので「…聞いてる?」って 言ったらにかって笑って「うん、めっちゃ聞きよるんやて」って言ってた。 それからはどこか違うとこを見てたけど、目をじっと見られるのってすごく ドキドキするなぁと思った。

雰囲気からして高級なお店を出るとき、「あ、チョコあげるね」って思い出 したように言ってみた。ほんとはこの後渡すんだってずっと考えてたのだけ ど。それまでいっぱい話してたのになぜだかお互い黙ってしまった。はいっ て言ったつもりが声が掠れてしまった。パックンは紙袋を受け取ったあと、 それが雨に濡れないようにジャケットの内側に隠すようにしながらにかって 笑って、ありがとうって言ってくれた。

ちょっとした恋愛観や、自分が知っている中で一番心に残っている言葉、少 し哲学っぽいことまで何でも話した。今まで好きな人の前で自分の考えをこ んなに素直にぶつけたことがなかったから、今すごくすごく不思議な気持ち だ。もっと自分の考えを知ってほしいと思ったし、知りたいと思った。

私よりもうんとたくさんの本や映画、人と出会っているからパックンの考え 方だとか思いはとてもしっかりとしたもので、そして色んな言葉で表現され てた。私は単純で在り来たりなことしか言えなくて、やっぱり経験不足で勉 強不足だと思った。もうすぐ19歳のパックンは、まだ17歳の私よりもやっぱ りうんと大人だった。

好きだとか恋だとか、そんな言葉にならないような気持ちをパックンだった らどんな言葉で表現するのかな。私ももっと色んな本や映画、人と出会って たくさんのことを吸収したい。そして、在り来たりな言葉でしかまだ表せな いこの気持ちにぴったりとくる言葉をみつけて、いつか伝えられたらなぁと 思う。

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メールで、おいしかったよって言ってくれた。やったー!

2月14日(土) 晴れのちくもりのち雨

 

渡せないかもしれなくても、渡せられたらいいなと思って「おいしい」って 言ってもらえるかなぁなんて考えながらチョコとバターを溶かしたり、卵を ふわふわ泡立てたり。焼き上がりを待つ時間はやっぱり大好きで、だんだん 部屋中に広がっていく香ばしい匂いを胸いっぱい吸い込んだ。

どうやら携帯を水の中に落としてしまったみたいで、私が「明日やっぱり会 えないかな?」と送ったメールのおかげでパックンの携帯はやっと他の誰か と繋がりを持てたみたい。「メールできるん、さーちゃんしかおらん!」っ て電話帳が真っ白になってしまったパックンが言ってた。私だけ、という響 きに少し照れてしまった。心配しなくちゃいけないのに。

新しい携帯に変えれるかもとあまり落ち込んでいなかったのだけど、花火や クリスマスツリーの一緒に撮った写真や、この前の"さーちゃん"の着信履歴 まで全部全部消えちゃったことに私が少し落ち込んでしまった。待ち受け画 面にしている大きな大きなツリーをじっと目に焼き付けて、私は水の中に携 帯入れたりなんてぜったいしないって思ってみた。

携帯のことでばたばたと話していたのだけど、そのあと「3時ころまでだっ たらいいよ!」って言ってくれた。目を閉じて一度だけ静かに深呼吸して、 部屋の隅っこにある買ったばかりの小さな紙袋とラッピング用のパッキンを 見た。学校からの帰り道、買っておいてよかったって思った。

会ってすぐに渡すものなのかな、それともバイバイするときに?なんて考え ながら、手帳にピンクのペンでまるを描いた。バレンタインに好きな人にチ ョコを渡すのはいつも突然だったから、こんな風に約束をするのは初めてで どうすればいいのかぜんぜんわかんないや。

2月13日(金) 晴れ

 

「なにぃ、好きなやつにチョコあげるけん14日休み入れたんかぁ?」お手 伝いしている定食屋さんで唯一同い年の男の子と休憩室で恋のお話。何か言 う度に恥ずかしくてカーテンに隠れてたら、初めて話したにも拘らず大笑い されてしまった。いっぱいアドバイスもらって、いっぱい自信もらった。ま だ会えるかどうかもわからないのに、気合だけは準備万端だ。

12時を過ぎたころ必ず「寝なくて大丈夫?」って訊いてくれる。眠くなけ ればもちろん、眠くても「お昼寝したけん大丈夫」とかって答えちゃうのだ けど。私がアルバムの整理をして思い出に浸っているときパックンは英会話 の本を読んでたりして、私も慌ててアルバムを単語帳に持ち替えてみたり。 私ばかりプラスになってく。私も何かパックンにとってプラスになれるよう なきらきらしたものを持っていたらいいのに。

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「2月14日」の響きって、私の中ではとてもとても素敵なものだったから、 その日は会えないかもしれないって言われたことに思ったよりもショックを 受けてしまった。ぐるぐるした気持ちをただ冗談ぽく振舞うことでしか消化 できなくて、いつのまに私は素直でなくなってしまったんだろうと思った。

ふわぁっと広がる、優しいチョコレートの香り。明日、学校で会う友達やお 世話になっている先生にあげるために作ってみた。もう1回作れる分だけ材 料はあるから、明日も作ろう。大好きな人にあげることはできないかもしれ ないけど、いっぱいいっぱい好きって気持ちを込めて作りたい。

2月12日(木) 晴れ

 

いつもはおしゃべりしながら20分間電車に揺られる道のりを、初めて自転 車で走ってみた。定期券が2月の初めで切れてしまったからというのもある けど、卒業するまでに一度はしてみたいと思っていたこと。坂を下るときの 頬から耳に伝わる風だとか、朝日を反射する水面だとか。もっと早くに知っ ておきたかったなぁと思うことばかりで、学校に着いたのは家を出てからち ょうど1時間経ったころだった。(ただ道に迷っただけだけど。)

締め切りが近かった広告制作の課題を終わらせたり文集の表紙をみんなで完 成に近づけたり。ただそれだけだったのだけど、また今日もいつのまにか外 は真っ暗になってた。いつもは私だけ歩いて門を出るのだけど、今日は私も 自転車。でも何だか慣れなくてふらふらしてたら「生まれたての小鹿みたい やぁ」って氏家ちゃんに笑われてしまった。

岩澤ちゃんとタニミカとバイバイしたあと、私が帰り道分からなくなったの で氏家ちゃんが大通りまで送ってくれることになった。氏家ちゃんが古い商 店街のお肉屋さんに寄ってくれて、おばちゃんに何か注文してた。おいしい けん!っておすすめしてくれた揚げハムは本当にとってもおいしくて何だか 涙が出そうになった。こうやって食べるの、いいなぁと思った。自転車で来 てよかったって思った。

お気に入りのピンクのペンで大きく囲んだところは、パックンと会えた日。 ピンクのペンを使い切っちゃうくらい、たくさん会えたらいいのにな。カズ くんは「あいつは顔には出さんけど内心さーちゃんと遊べたりして嬉しいと 思ってるよ♪」ってメールをくれた。何だか笑ってしまった。

自動車の教習所に通っているパックンは「もう少しあとだったら映画館でも どこでも車で行けるのになぁ。こう、スイスイっと。」ってハンドルの操作 をする真似をしながら笑ってた。でも、一緒にお話しながら電車に乗ったり 歩いたり自転車の二人乗りしたりできたこと、すごくすごく楽しかったよ。

天気予報のお姉さんが、暖かい日の割合がだんだんと増えることを伝えてい た。ぐるぐる巻いてたマフラーもいらなくなるし、ふわふわさせてた白い息 も見れなくなる。本当の本当は、不安でいっぱい。春はいちばん大好きな季 節なのに。

大好きな春が、もっと大好きになりますように。

2月9日(月) 晴れ

 

ここ何ヶ月かの新しい曲はほとんど知らないから、少し時期のずれた懐かし い曲を片端から歌った。図書館も自習の教室も大好きだけど、やっぱり大き な声でわいわいできるカラオケ屋さんも好きだなぁと思った。それにしても 一体何ヶ月ぶりに来たんだろう。

甘い甘い山葡萄ジュースを飲みながら、少しだけ甘い恋のお話をした。前に こうしてカラオケ屋さんであゆみちゃんとお話をしたときは、少しだけほろ 苦いジンジャーエールを飲んでた気がする。途中で隣の部屋で歌ってたまり こたちがt.A.T.u.の真似っこを披露しに来てくれたりして、いっぱい笑っ てしまった。まりこたちとは偶然会ったのだけど(しかも数年ぶり)変わらず 笑わせてくれて何だか嬉しかった。

バレンタインに会えないかなってことをメールで送ろうって決めて、いつも のように目を閉じて送信ボタンを押した。ばふってソファに転がったあと、 『うちいつも自分からメール送るとき、こうやって倒れてしまう』って言う とあゆみちゃんが分かる分かるって大笑いしてた。私だけじゃないんだって 思って嬉しくなった。ゆっくり体を起こして、私も笑った。

おれはいっぱい(他の子からも)もらうからなぁとか何とか言っていてはぐら かされたのかなと思ったのだけど、おやすみをいう前に『じゃぁ、楽しみに しててね』というと笑顔の絵文字付きでわかったって言ってくれた。どうや らバレンタインは暇みたいだし、渡せられたらいいなぁ。

入試3日前にも拘らず、私の恋路を心配してくれている階段の人は「手作り が男としては嬉しいよ」だなんてメールをくれて(相談も何もしてないのに) いっぱい笑ってしまった。階段の人が羨むくらい、幸せな報告ができたらい いのにな。

2月8日(日) 晴れ

 

少し着くの早かったかなぁなんて思いながら、手鏡と睨めっこして大きな柱 の前に立った。今日こそは落ち着いて隣を歩けるように、お気に入りのブー ツは諦めて踵の低いシューズを履いてきた。二度小さく背伸びをして、小さ く深呼吸。ふと向かい側のベンチを見ると、小説片手に足を組んでいる男の 人がいた。思わず笑ってしまった。シューズだから走ってパックンのところ へ行くことができた。

動く歩道を使うとき、パックンは必ず手すりに凭れかかる感じで体をこっち に向けるからすごく照れてしまう。笑って口を押さえるふりしながら頬を冷 やした。思い出したように「あ、これって歩かないかんのだったっけ。」っ てゆっくり歩いてた。止まったままでもよかったんだけどなぁって思った。

乗り換えの電車が発車するまでの間、古びた二両編成の電車の古びた椅子に 座ってお話した。「これが東京とか神戸だったら電車待つ時間なんて2分も ないんやろうなぁ。2両とかもありえんよな!」ってパックンが笑ってた。 でもここが発車するまで20分もかかっちゃうような田舎だから、こうして 座ってお話できるんだって思った。よかったって思った。

『昨日はもらったお茶全部すぐに飲めんかったんな。熱すぎて。でも今日 "さやちゃんは真ん中の飲んでね"って言われたん。で、真ん中の取ったら 小さい氷ひとつ入れてくれてたん。なんかすごい嬉しかったぁ。』

「うわぁええなぁ、そういうの好きやぁ!こう、さりげない優しさっていう んかなぁ。わかるわかる!」

『でしょ!むっちゃ感動してしまったん。私も先輩みたくどんな小さなこと でも気遣える人になりたいって思った。こう、何も言わずに。』

「言いたいことわかるで。ええなぁ。おし、おれもがんばろ。」

嬉しかったことやいいなぁと思ったことをお互いに話しているだけなのに、 あったかい笑いが止まらなかった。パックンの少し斜め後ろを歩いて、いっ ぱい笑って白い息をふわふわさせて、幸せだと思った。風が吹いたとき私が パックンの後ろに隠れていると「おれを盾にしとるな?」って言いながら逃 げてていっぱい笑ってしまった。

映画が始まる前、パックンは携帯をどのポケットに入れたか分からなくなっ ちゃったみたいで「ごめん、電話かけて」って耳元でそっと言われてしまっ た。それだけで耳まで一気に熱くなってしまったこと気付いていないんだろ うなぁなんて思いながらパックンの番号に電話をかけると、後ろのポケット で携帯が光ってた。あった、よかったぁって嬉しそうだった。ディスプレイ に表示された"さーちゃん"って文字にまた耳が熱くなってくのが分かった。

空は真っ暗で、冷たい風が火照った頬に心地良かった。映画の感想を語り合 いっこしながら夕方歩いた道を戻った。澄んだ空には星がいっぱいきらきら してて、パックンと会うときっていつも夜だなぁと思ってみた。帰りの電車 も30分後とかで、ローソンで暖まろうかって笑った。

おでんとからあげ君でずっと迷ったのだけど、だいこんがおいしそうで仕方 がなかったのでおでんを買うことにした。そしたらパックンはからあげ君頼 んでた。駅のベンチでいただきますって言ったあと「欲しかったんやろ?」 ってパックンがからあげ君をひとつくれた。笑った。

乗り換えの大きな駅に着いたとき、パックンの友達くんが椅子に座っていて 「写真撮ってやろうか?フライデーに投稿してやるっ!」って笑ってた。気 をきかせてくれたのかすぐにどこかへ行ってしまったのだけど、恥ずかしく てパックンと上手く話せなくなってしまった。

電車のドアが音を立てて閉まったあと、手を振りながら声を出さずにバイバ イって言った。バイバイってしてくれた。さっきの友達くんが同じ電車に乗 っていることに気付いて、慌ててドアに背を向けた。

映画が始まる前の予告をしているとき、お互い小さな声で見たいって笑った のがあった。でもそれは5月ころの上映で、もうこんな風に一緒に見に来た りはできないのかなって思った。ドアに背を向けたときそのことを思い出し てしまって、背を向けたことをすぐに後悔した。でも既に発車してしまって いて、振り返ってもパックンは見えなかった。

いっぱい幸せだなぁ、嬉しいなぁと感じると、それだけ春からのことを考え るのが恐くなる。でも今日、私はとってもとっても大好きな人とお出かけで きて、本当に幸せだなぁ、嬉しいなぁと思った。その気持ちに自信を持って 春からもがんばれたらなぁと思う。

2月7日(土) くもりのち晴れ ときどき雪 

 

もうすぐ、待ち合わせの時間。

2月7日(土) 15:48 晴れ 

 

大きなバームクーヘンを氏家ちゃんと半分こして食べながら、おいしいとか 幸せだとか言い合いっこした。タニミカがくれた辛すぎるお菓子にみんなで 大笑いしているとき、向こうの丸いテーブルで友達くんとおしゃべりしてい る階段の人の大きな背中をみつけた。

こうやって好きな人の背中を見たりだとか、好きな人の部活しているところ がよく見える場所を「指定席」と呼んでみたりだとか、部活が終わるのを待 つ間に飲むココアだとか。小さな、でもとっても大切な思い出がいっぱい詰 まった食堂は、今日もストーブの匂いがしてた。ずっと、同じ匂い。

窓が鏡に変身しちゃうほど、いつの間にか外は真っ暗になってた。井上先生 が「今日はお前の好きな図書館行ってこないかんけん、俺はもう帰るわぁ。 あとは任せた!」とか言いながら予約してあった本を取りに出てた。うちら も帰ろっかって氏家ちゃんと笑いながら、井上先生は私が図書館にいっぱい 通ってたこと知っててくれたんだって嬉しくなった。

春から友達も東京に住むけんよろしくね、って言うとパックンが「東京はこ わいけん面倒みてやるってゆっとけ!」なんて笑ってて、何だか冗談って分 かっていても友達をうらやましく思ってしまった。最近は春からの一人暮ら しについてお話することが多くて、楽しみだってお互いに言うたびに寂しい なという気持ちも私だけ大きく大きくなってしまう。

前から見たいねって言ってた映画の先行上映が明日あることを教えてくれて 私が「見たいなあ。予約制なのかな?行ったはいいけど見れなかったらショ ックやぁ」とかテレビを見ながら何となくそうメールを打っていたら、「電 話で確認するから行こ!」って返信があった。それまでテレビに大笑いして たのに、一瞬で何に笑っていたのか忘れてしまった。

まだ見れるって決まったわけじゃないのに、そう言ってくれたことが嬉しく て嬉しくてしょうがなくなった。こんなことならお昼にあんな大きなバーム クーヘン食べるんじゃなかったなんてぐるぐる考えながら、鏡の前で前髪を なんとなく梳いてみた。口元の緩みだけは手を使ってもなおすことができな かった。

明日、会えるのかな。会えますように、会えますように。会いたい!

2月6日(金) くもり ♪始まり 冬の恋歌(ソナタ)より が、大好き

 

手すりにお気に入りの傘をかけて、夏からずっと使っているカバンを膝の上 にのせて、読みかけの本のスピンをくるりと後ろへ隠した。少し姿勢を正し てみる。電車の中で本を読むことを好きになったのは、待ち合わせのときに 好きな人が茶色いブックカバーをした本を読んでいて、それがとてもとても 良く似合っていたから。

少しでも空いた時間があればコーヒー片手に少し厚めの本を読み始めちゃう ようなひとで、自分探しなんて言いながら神戸にひとりで旅に出ちゃうよう なひとで、とっても温かい映画に何度も涙を流しちゃうようなひとで、少し だけいじわるなうそもついちゃうようなひと。

そんな好きな人に少しでも近づけたらいいなぁと思って始めた読書も、何だ か形になってきた。スタバで誰かを待っているときにコーヒー片手に読書、 だなんて大人なことは私にはまだ早いと思ったから、私の読書タイムは電車 の中にしようって心の中でそっと決めてた。今日もほんの少しだけ、好きな 人に近づけた気分。

食券を食堂のおばさんに渡して、クリームコロッケで!ってみんなでお願い した。岩澤ちゃんが私のクリームコロッケにケチャップをのせてくれたのだ けど、それがアンパンマンそっくりでいっぱい笑ってしまった。どんな小さ なことでも大きな大きな笑顔になるみんなが大好きだ。

2月2日(月) 雨のちくもり

 

お風呂上りのぽかぽかした気分のまま、テレビの前で枕を抱きしめて座り込 む。今更ながらだけど、おばあちゃんがプレゼントしてくれた冬のソナタの DVDを毎晩一話ずつ見ることが毎日の楽しみだったりする。ぎゅうとなって この切なさは絶対パックンも分かってくれる、なんて携帯を握り締めたりす るのだけど、見ているのは私だけなんだと気付いてパチンと閉じることにな る。

大好きだった階段の人は、今でもときどきメールをくれる。試験前だと応援 してくれたりだとか、パックンとのことでアドバイスをくれたりだとか。今 日は階段の人の恋愛相談みたいな感じで、笑顔の絵文字を付けて応援するこ とができた。応援しよるけんね、ほんとに。

2月から自宅学習期間だから自由登校なのだけど、仲良し4人で学校の定食食 べに行こうってことになった。明日はクリームコロッケみたい。去年、自宅 学習期間なのになんで先輩は食堂にたくさんいるんだろうと思ってたけど、 その気持ちすごくすごくわかるなぁと思った。

今日の一品は野菜を大きく切ってじーっくり2時間かけて煮込んだポトフ。煮 込みすぎて軟らかくなりすぎてしまった。いつか大好きな人に作ってあげる ときまでには上手になってますように。

2月1日(日) 晴れ 幼馴染まみちゃんの誕生日。19歳おめでとう!

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