ピンポンとベルが鳴る前の、すっかり意味のないテレビからの笑い声だとか 部屋に響き渡る音楽が好きだ。全然頭に入らなくて、だけどそれらがないと 落ち着けなくて。ドアを開けるといつもの笑顔があって、さっきまでの緊張 が嬉しさに変わる。髪形の変化に気づくとすごく嬉しそうにしていた。でも 変やろ?なんて聞かれて、かっこいいよって笑った。そういってほしいんで しょと照れ隠しで言うと、うるさいなあと笑われてしまった。

ふかふかのホットカーペットに座って毛布を掛けるのが私のお気に入り。本 当はこたつを買おうと思っていたけど、これでも十分あったかい。当たり前 のように一緒の毛布に入ってきたから、何だかほんとに顔が火照って恥ずか しかった。こんなことも慣れているのかなぁと思ったけど、ほんの少しある 肩と肩の距離が余計に何だか恥ずかしかった。

この前、休み時間に聞かせてくれた曲をさっそく借りたのでかけてみると、 最初から最後まで歌ってた。そのときは話しかけても頷くことしかしてくれ ないけど、あまりにも気持ちよさそうに歌うので私まで何だか清清しくなっ てしまう。こんなにのびのびと人前で歌うひとは今まで見たことがないし、 つられて私も口ずさんでいることにまた驚いてしまう。やっぱり彼は何だか とても魅力的だ。

俺の特等席なんて言いながらベッドに寝転がっていて、深く布団をかぶって た。もう、と布団の上から軽くたたくと怒るなよ、と言われた。怒ってない よ、ただ照れただけだよなんて思った。ひとことひとことに笑っていると、 上からばふっと布団を掛けられた。わぁ、と思った。いっぱい笑った。

坂井くんの手は何だかとっても温かくて大きかった。そのとき初めて自分の 手がとっても冷たいことに気づいた。ふとしたことから腕相撲みたいになっ て、ぎゅうって手を握った。いっぱい笑った。ほんの少しだけ触れるだけで 何だかさっきよりも一緒にいることに照れよりも心地よさのが大きくなった ように思った。膝が当たるくらいに近くで、一緒の毛布を掛けて座った。

*

部活が終わってバイトが始まるまでのほんの少しの間。会えたことが何より も嬉しくて、一緒に笑えたことが幸せだった。淡い色の部屋に、黒が似合う 坂井くんがいるのは何だかとても違和感があるように思ったけど、でも彼が 帰ったあとの部屋は何だかすっかり色をなくしてしまったみたいだった。ば ふっと布団に包まると坂井くんの香りがして、何だか恥ずかしかった。ずっ と消えなければいいのに、と思った。

*

たんちゃんに今日のことを言うと、「それもう付き合ってるやん」と言われ た。だけどただの友達、なんだよなぁ。キスはしたん?と訊かれて、首を振 った。恋人なんて甘い響きの関係ではないけど、でも何だかこんなに幸せな 気持ちになれるんだったら友達という関係も全然悪くないよ。イブとクリス マスはお互いバイトだから、だから私にとっては一緒に過ごせた今日がクリ スマス、にしちゃおう。素敵な時間をありがとう。

12月23日(木) 晴れ

 

一緒の教室を出て、このあとの約束なんて忘れちゃったのかと思うほどの笑 顔で坂井くんは友達とコンビ二に向かってた。私もひとつも緊張してないよ とばかりに笑顔で優子ちゃんとお話しながら、ほとんどの学生が帰りに寄っ ているコンビニの前に。ぴかぴかと携帯が光って、もしもしと出たと同時に 携帯を片手に持つ坂井くんと目が合った。笑った。

そのあと優子ちゃんには「坂井くんがあまりにも笑顔で話しかけてたからて っきり付き合ってるのかと思った!」なんて言われて嬉しかったのだけど、 それくらい真っ直ぐな笑顔で「どこいこっか」と坂井くんが言ってくれた。 周りには授業を終えた学生がたくさんいたから何だか照れくさすぎて、私は 曖昧な返事しかできなかったのだけど。

坂井くんは原付で学校に来ていて私はバス通だから、バスの終点で坂井くん のバイト先のお店もある駅を待ち合わせ場所にしてバイバイをした。ミスド の前に集合って言ってたのに、バスを降りるとすぐに煙草片手に坂井くんが 待ってくれていて、嬉しすぎてお礼をいう声が少し高くなってしまった。ほ んとに、どうして諦めさせてくれないんだろう。

結局ほんとの待ち合わせ場所だったミスドまで少し歩いて、お茶することに した。大好きなドーナツを三つずつ選んで、ホットミルクティーをセットに。 私が選んだドリンクを必ずふたつ注文してくれるから、何だかいつも照れて しまう。休み時間に自販機で缶ジュースを買うときも、先に選ばせてくれて 必ず一緒のを坂井くんも買っているから、何だかほんとに嬉しい。

一緒にスーパーで買い物をして、坂井くんのバイト先にも遊びに行ってたく さん笑った。ほんとにこのひとはどこでも愛されているんだなあと思った。 だけど「でも彼女とかじゃないっすよ。大学の友達!」と紹介されるたびに ほんの少しだけずきずきとしてしまった。でも一緒にこうして放課後お出か けしたりお茶できるだけでも、十二分にしあわせだよ。

*

依里ちゃんは彼氏さんとまだ二人でデートしたことはないって言ってた。私 は彼氏ではないけど好きだと思う人と、何度もふたりで一緒にご飯食べたり 遊んだりした。付き合うってなんだろう、とか、そんなことをぼんやりと考 えてみても答えは何だか曖昧なままだ。高校生のころ憧れてたことがどんど んと叶っているのに、な。

ただ、バス停で煙草片手に冬の夜に待ってくれたりだとか、向かい合わせに 座ってドーナツをひとつのトレイにのせて分け合ったりだとか。そんなわず かな、だけど温かいひとときを与えるのが、坂井くんにとって私だけであっ てほしいなって思う。わがままでごめんね。

12月20日(月) 曇りときどき雨

 

待ち合わせていた時間よりも前に着いてしまったので、これじゃあ会いたが っているのがばれちゃうや、なんて思った。だけどガラス越しに雑誌を立ち 読みしている坂井くんを見つけて、わあ、と思った。ギャップが多いとこに 惹かれたのかも、といつか言ったけど、こうしていつも先に待ち合わせ場所 に来てくれることもそのひとつだったりする。いつも、ありがとう。

朝の空気は澄んでいて、高い空の水色がとても優しいな、と思った。食堂に 入るとまだ学生は少なくて、足音や声が響いてほんの少し照れくさかった。 缶コーヒーを買ってくれて、ありがとうって笑った。今度こそ私がふたり分 買おうといつも思うのだけどなあ。温かいコーヒーを両手でぎゅうとしなが ら、向かいに座る坂井くんのお話を聞くのが大好きだ。とても優しく笑う人 だから、一緒にいてとても心地がいい。

好きな曲があるねん、とMDプレイヤーのイヤホンを片方差し出してくれた。 もう片方は坂井くんの左耳と繋がっていて、ほんの少しだけ顔を近づけて耳 をすませた。サビの部分は少し聞いたことがあったので、一緒になってリズ ムにのってみた。ふはって笑って、幸せだ、と思った。どきどきが、嬉しか った。

授業が始まる時間が近づいて、一緒に食堂を出た。私が部室棟に寄る用があ ることを言うと、坂井くんは少し遠回りして途中まで一緒に来てくれた。バ イバイってして、笑った。思わずスキップしたくなるくらい、嬉しかった。 私がまだ好きだと思っていることを知っているのに、こんなふうに幸せな朝 をくれてありがとう。

*

教室に入っていつもの席に座ると、あゆちんからメールが届いていた。「ロ ーソンにあの人がいるよ!」なんて書いてあって、照れた。受信した時間か らすると、それは待ち合わせのほんの少し前のことだったから。そのことを あゆちんに伝えると、「ごっちと会うためにローソンにいるんだったらいい なって思って送ったんよ」なんて言ってくれて嬉しかった。

あゆちんとともこちゃんと3限の教室に向かっていると、向こうから坂井くん が友達くんたちと歩いてきていた。すれ違うほんの少し前に目が合って、笑 って、バイバイってしたら手を振り返してくれた。あゆちんが私の右腕をつ ついてきて、笑った。何だかやっぱり幸せだ、と思った。

12月17日(金) 晴れ

 

トレーナーの前ポケットに手を入れて、久しぶりのシューズに足を慣らしな がらグラウンドまで少し早足で向かった。夕方の部活は本当に久しぶり。後 ろからバイクが近づいてくる音がしたので少し右に寄ってみて、横を見て思 わず立ち止まってしまった。それに気づいたのか通り過ぎたはずのバイクが ゆっくりと引き返して来て、メットの下に坂井くんの笑顔をみつけた。やっ ぱり、と思った。

話すときはいつもウォークマンのイヤホンを外してくれるところだとか、目 尻をうんと下げて笑ってくれるところだとか。一緒にいることが、こうして ほんの少しでもお話できることが何だか楽しくて、嬉しくてしょうがなかっ た。振られたのにこんなに幸せでいいのかな。バイバイと笑って、グラウン ドに駆け下りた。バイクの音がだんだんと遠くなっていった。

久美ちゃんと小さな居酒屋さんに入って、カクテルで乾杯をした。周りには サラリーマンのおじさんたちがいたり、どこかの大学のサークルの飲み会が あったりしてざわざわとしていたけど、やっぱり誰かとゆっくりお話するの が好きだなあと思った。将来のこと、部活のこと、だけどやっぱり恋愛のこ と。ほんのりと火照った頬、気がついたら1時をまわっていた。

眩しすぎるほどの星空を見上げて、つんと冷える鼻をすすりながら立ち止ま った。一瞬ふたりが息を呑むのがわかった。どんな悩み事も悲しいことも、 小さく小さく思えてしまう。きっと、今は苦しくてしょうがないことももう 少ししたら素敵すぎる思い出話になるはず。今までがそうだったから、きっ と。

12月16日(木) 晴れ

 

昨日の夜にまだ諦めていないだとか諦めただとか言い合っていたから、3限 が始まる少し前に教室で会ったことは何だか嬉しいのか恥ずかしいのかわか らなかった。そのあとしばらくして"そっこー会ったな☆"とメールが届い ていて、ほんとにこのひとは、と思った。講義の間、髪型変えたの気づいた ?だとか前とどっちがいい?なんて他愛ないメールをくれて、隣にいたあゆ ちんに「今のも前のもすき。」って言ったら大笑いされてしまった。

何度も会いたいと言って、話したいと言って、だけどその全てが叶うわけな んてなくて、そのたびに自分を責めたりした。放課後のベンチでコーヒーを 飲みながら、久美ちゃんに「ごっちはほんとに好きになると、好きになりす ぎるんやね」なんて言われたりした。好きな人に何度もごめん、と言わすの はつらくてしょうがなかった。そう言われるのが、恐かった。

まだ気になっているよ、と伝えるのは恥ずかしくてしょうがなくて、また振 られたらどうしようと思ったけど、でもうそはつきたくなかった。素直に伝 えたらびっくりされたけど、それに対する直接の返事はなかったけど、でも 普段と変わらず接してくれて嬉しかった。嬉しかった。

バイトが終わってのんびり家で過ごしていたら、メールが届いた。バイトが 休みの日を教えてくれたので、毎回誘うのも緊張するって知ってるのかなあ なんて思いながらも、いつもみたく「じゃあもしよかったら月曜授業終わっ たあとお茶でもしよ?」と、メールを送った。今日は珍しく曖昧な返事じゃ なくて、ちゃんといいよって言ってくれた。素直に伝えたおかげだったらい いな、と思った。

12月15日(水) 晴れ

 

本を一ページ捲る音を聞いたとき、心が落ち着いているんだな、と感じる。 バイトのない日は部屋でゆっくり過ごすのが好きだ。もちろん友達と会った り電話をしたりするのも好きだけど、やっぱりこんなにも心を落ち着かせた のは久しぶりだからなのかな。もっとひとりの時間を大切にしよう、と思っ た。

夏にあった同窓会の集合写真が届いて、ふは、と声に出して笑った。夏休み の真ん中に行われたものだから、私ひとり真っ黒に日焼けして写ってた。部 活の勲章だ。ほんの少し右上には高校のころ片想いしてたひとが写っていて 何だか嬉しかった。きっと何年か前の私なら、こうして集合写真に一緒に写 れたことでも友達にお母さんに真っ赤な顔して嬉しさを伝えたんだろうなぁ。

木々がぴかぴかと5時限後のキャンパスを縁取っていた。この大学はどこに お金掛けているのだろうと思ったけど、とてもそれがきれいだったので素直 に「わぁ」と驚いてしまった。木々の装飾や街の至る所にあるツリーは去年 のクリスマスと結びついてしまって、やっぱり忘れられないや、と思った。 年末に香川に帰るみたいだから、また会えたらいいな。

後ろの席の人は、相変わらず私の頬を赤くさせる。何だろう、煙草を吸う人 なんて嫌いだったはずなのに。授業をさぼる人なんて、好きになるわけない と思ってたのに、なぁ。明日お互い4時限までなことだとか、お互いがバイ ト休みなこと。そんなことにほんの少し期待をしながら、何だかやっぱり今 は君のことでいっぱいみたいだ、なんて改めて実感するよ。坂井くんが、好き。

12月13日(月) 晴れ

 

星の瞬きをひとつひとつ数えながら、橙色に照らされた歩道をゆっくり歩く。 ほうっとときどき目の前が真っ白になるのは、私が息をしているから。当た り前のことが何だかおかしくて、あくびをするみたく大きく息をした。ファ ーがついたフードをすっぽりとかぶって、お風呂のぽかぽかさを想像しなが らぱたぱたと少し早足で家に向かった。バイト帰りの、少しの時間のこと。

プレゼンの授業で個人発表が今週から始まった。私は第一週の二番目で、憧 れでもある先輩のあとだから、本当に今日は緊張した。中学のころから放送 部だとか発表会の経験で慣れてはいるはずなのに、やっぱり頬が熱く熱くな った。声は震えるし上手く前も向けないけど、でも発表後の温かい拍手がや っぱり大好きだ。

中学、高校と何か個人発表をする機会があると、恥ずかしがるわりに必ずと 言っていいほど参加してきた。その度に自分の考えの幼さに歯痒さを感じて いたのだけど、でもやっぱり自分の考えや成果を知ってもらうのは好きだな と思う。こうやってずっと日記を書いているのも、日々思ったことや感じた ことを誰かに知ってほしいからなのかな、と思う。

大勢でわいわい騒ぐのは苦手だけど、誰かとひたすらおしゃべりをするのが 大好きだ。最近はあゆちんや久美ちゃんと将来のことだとか恋愛のことだと かをひたすら話した機会があって、やっぱり刺激になった。同時にこうやっ て心の底の底から話せる友達がいることをとっても嬉しく思った。

*

手帳の右端に、好きな人の名前。素敵な週末になりますように、なんて。

12月9日(木) 晴れ

 

真っ白な息も、瞬きするみたく静かに光るイルミネーションも、悴んだ指先 も、コツコツと響くブーツの音も。ずきずきと心が痛むたび、こんなにも好 きになったんだなあと気づかされる。大丈夫大丈夫、と言い聞かせるように 上を向いた。夜なのにちゃんと雲は白く浮かんでいて、その向こうで星が白 く瞬いていた。ただのやきもちのかたまりだよって、笑われた気がした。

教室に彼が入ってくる瞬間、ぱっと何かが弾けるようにみんなが注目する。 またお前黒かよなんて誰かがからかって、ふはっと優しい笑い声で包まれた。 語学のクラスは少人数だからかとっても仲が良くて、中学の放課後みたいな 雰囲気。そのなかで彼のひとことひとことに一喜一憂してしまうのは、片想 いの人の背中ばかり見ていた中学のころの私みたいだ。

隣のペアの男の子と私の持っていたシャーペンが可愛いだとか変だとか言い 合っていたら、斜め前にいた坂井くんが消しゴムを横の席の男の子にちぎっ て投げていて、小学生みたいってみんなで笑った。振り向くたびにどきりと してしまうから、横の男の子に「さっきから曖昧な返事ばっかやん」と笑わ れてしまった。

コーンスープを買おうとレジに並んでいたら、二人前に並んでいた女の子が 坂井くんに「おごってよ!」と缶コーヒーを渡していた。ずきんとして、受 け取らないでほしいなぁと願った。だけどいいよ、なんて声が聞こえた。そ のあともそれを見た別の女の子がお菓子をねだっていて、何だかずきずきし すぎてどんどん不細工な顔になるのが分かった。やきもち、だ。

どうして好きになりすぎてしまうんだろう。もう諦める、なんてベソをかい た子どもみたく久美ちゃんに泣きついて、諦めるつもりなんてひとつもない のにずっとそんなこと言ってた。ほんの少し彼にとって、特別でいたいと思 ってしまった。

12月6日(月) 晴れ

 

ふわっと煙草の匂いがした。真っ白に光るカーテン、お気に入りのふかふか カーペットに座りながら歌詞カードに目を落とした。坂井くんはというと、 MDデッキのリモコンを持ったままベッドでごろごろしてた。サビが終わると すぐに次の曲を聴こうとするから、その度もう、と怒った。「おれはたくさ ん聴きたい派やねん」なんて言い張っていて、怒ってはいないけどもう一度 だけもう、と言った。

私がいつも抱っこしているぬいぐるみをぎゅってして、ふかふかやあって笑 っていた。当たり前のように枕に顔を埋めて目を閉じているから、私はどう すればいいのかわからなくて、ただワックスで整えられた坂井くんの髪をそ っと触ることしかできなかった。『うちがんばるけん』とわざと声を高くし て坂井くんが笑って、私は熱くなる頬を両手で押さえながら、もうやだ、と 言った。久美ちゃんにまだがんばる宣言をしたことがそのまま伝わってしま ったみたい。

駐輪場でバイバイをしたあと、バス停までの坂道をひといきで登りきった。 押しボタン信号のスイッチを押した手で前髪を梳いていると、原付に乗った 坂井くんが煙草を銜えながら私ににい、と笑顔をくれた。それに笑いながら バイバイと手を振ると、ぶん、と音を立ててバイクが遠くなっていった。授 業が始まるまでのほんの少しの時間を好きな人と過ごせたなんて、何だか夢 みたいだ。

昼休みや空き時間にすれ違って、語学の時間は同じ教室で笑っていて。気に なることを伝えて、だけど受け止めてもらえなくて。こんなふうに真っ白な 朝にほんの少しだけ幸せな時間を過ごして。幸せな片想いは我侭だからもっ と幸せになりたいと思ってしまうのだけど。「さっきまで一緒にいたんだ」 と友達にそうっと話しても、やっぱり言葉は難しくてドキドキだとかぎゅう と切なくなる気持ちだとかは伝えたいことの半分も伝えられなかった。

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久美ちゃんと夜のラーメン屋さんでお話をした日のこと。「あいつね、ごっ ちに気になるって言われた日ぃ、バイト先で考え事してて転んだらしいよ」 なんて笑っていた。「今はまだちゃんと返事できないけど嫌いとかじゃ全然 ないって言いよったし。あたし、ごっちの好きな人があいつでよかった!」 って言ってくれて、嬉しすぎた。久美ちゃんとは春から恋愛のことや将来の こと、一人暮らしのこと、何でも語り合ってきたからこんな風に真っ直ぐに 応援してもらえるとほんとに嬉しい。いつも、ありがとう。

*

あゆちんが「ごっちの好きな曲が入ってるアルバムMDに録ったからあげる よ」と、オレンジ色のMDをくれた。のんびり手帳に予定を書き込みながら部 屋で聴いていると、最後だけ違うアーティストの曲が入っていた。何だろう と思いながらタイトルをもう一度見てみたら、"ゴッチヘ**イマノキモチヲ タイセツニ!!!"と、メッセージが。目の奥がぐうとなって、声にならないく らいびっくりして、嬉しかった。温かかった。

以前だったら悩みごとがあってもつらいことがあっても、家に帰れば家族が いたから淋しさもすうとなくなっていったけれど、一人暮らしを始めてから は一人で抱え込むことが多くなっていた。だけど、そんなときに傍にいる友 達がいつも温かく支えてくれた。自信を持って、みんなと出会えて私は幸せ だって言えるよ。いつもほんとにありがとう。大好きです。

12月3日(金) 晴れ

 

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