姿勢をピンと正したときの目の高さにミラーを合わせているから、後ろの車 が見えないなあと感じたときは猫背になっている証拠。だめだめ、と思って 背筋を伸ばしてみる。陽のあたる坂道、を聴けた朝はとっても気持ちがいい。 まだのちと付き合っていなかったころ部活のみんなでカラオケに行ったとき、 私がこの曲を歌ってのちは少しどきってしたみたい。思い出し笑いに頬が緩 んだ。

教科書を開いて、机をくっつけた。門ちゃんと来週の口述試験のシナリオを 考えながら、結局ドイツ語理解しきれないまま授業が終わっちゃったねって 笑った。斜め少し前に座るあのひとの後ろ姿をなんとなく眺めながら、おと としの冬のはじまりの日を思い出した。中学生みたいに、教室に響くざわめ きの中から声を探していた。

とっても曖昧な別れだったけど、時間の流れはとっても温かく傷を包んでく れた。ドイツ語が理解しきれないままだったみたく、一匹狼みたいな彼のほ んとの気持ちだとか思いは理解しきれなかった。だけど、なんていうのかな あ。彼に恋をしたこと、別れを選んだこと、そして友達になったこと、その ひとつひとつのどの出来事も感情も、間違っていなかったと心から思う。

夕方過ぎから語学のクラスのみんなで集まって居酒屋さんへ。学校に車があ るから私はカルピスばかり飲んでいたのだけど。わいわいおしゃべりしなが らみんなで過ごすこと、大好きだなあ。先生も参加してくれて、本当に騒が しいクラスだったわあとくすくす笑っていた。私とあのひとが付き合ってい たこと知っているのは、このクラスの中ではたぶん優子ちゃんだけ、かなあ。

バイバイ、とみんなに手を振った。どんなふうにみんなは思い出を心の中に 残していくのかなあなんて、漠然と思った。私が知らないだけで、私の周り でも色んなひとたちの想いが交差したり、途切れたり、していたのかなあ。 いつだったか「別れたこと後悔したことあった?」と訊いたとき、「そうい うのは言葉にしたらだめなんだよ」と言われたことがあった。たぶん知らな くていい想いや気持ち、出来事も、溢れかえっているんだろうなあ。

自分と向き合う時間、ができると、とっても物事を深く考えてしまう。ただ ひとつこうして日記を書きながら思ったのは、きちんとあのひとのことを過 去のこととして気持ちが整理できているんだ、ということ。言葉にすること をどこかいつも避けていたけど、思い出として前向きに振り返られるように なったよ。

*

のっちゃんと記念日デートはどこ行こうかと決めていたときに、毎日放送の らいよんチャン見に行きたいといったら大笑いされました。冗談みたく聞き 流されたのだけど、かなり本気だったのになあ。大阪だったらJRでの移動の 間もずっとおしゃべりできるし、ぴったりだと思ったのに。

らいよんチャン  かわいすぎる!

1月17日(火) 晴れ

 

バンダナを取って鞄に入れようとしたとき、ぴかぴかと携帯が光っていた。 画面には登録していない番号が表示されていた。もしもし、と出ると、いま 大丈夫かな、と懐かしい声。ドアをぱたんと閉めて、オレンジ色の街灯が照 らす歩道をゆっくりと歩いた。ちょうど去年のいまごろも、こうしてこのひ との声を聴きながらこの道を歩いていた。

補講の日程を確認するだけの電話。だけど何度かくすくすと笑ってしまった。 のちに誤解をされたくないから電話帳からすっかり消えてしまっていた彼の 番号。登録し直すこともできたけど、もうしないと思う。この後期で一緒だ った語学の授業ももう終わりだし、彼との共通点はただ同じ街に住んでいる こと、くらいかなあ。

私は誰かと付き合った、という経験がとっても少ないから、“昔の恋人”と の関係はどうしておくべきか、なんてひとつも分からない。のちは縁を切る べきだと言うから私はなるだけ坂井くんと関わらないようにしているけど、 でも思い出や記憶は鮮明に残っているから、全てを忘れることはたぶんこれ からもないのだと思う。

だからといってのちを裏切るようなことも絶対にしたくない。電話を切った あと、すぐにのちに電話をかけた。「さやちゃんどした?」と、いつものの ちの声がして、鼻のあたまがつんとした。「お互いバイトの疲れ取るために 温泉行こかあ」と、のちが笑ってくれた。電話越しだけど、大きく頷いて 「うん、行く行く」って笑った。

ふたり隣合わせに座って、コーヒー牛乳を飲んだ。有線から流れる曲に合わ せて口ずさんでいたら、さやちゃんご機嫌さんだねってのちが大笑いしてい た。中学のころからいっぱい片想いをしていっぱい幸せになっていっぱい傷 ついてきたけど、のちの隣にいるときがやっぱり一番心地良いよ。一番自分 らしくいることができるよ。

*

「俺らのなかで誰が一番早く結婚するかなあって話になったときにな、滋ち ゃんが"みんなお前とさやかちゃんだろって思ってるよ"って言うてた。お似 合いらしいぞ、俺ら」なんて教えてくれた。

9ヶ月記念日。水曜日はどこへ行こうか、のっちゃん?

1月16日(月) 晴れ

 

少しひんやりとした外の空気を、すうっとおなかが膨らむほど吸い込む瞬間 が好き。いつだったか早起きした日に、窓から頭を出して犬みたく首を振り ながら濡れた頭を乾かしていたひとを思い出す。たぶん実家の前のあのアパ ートは学生がたくさん住んでいたから、たぶんきっと彼も学生だったはず。 そのころ私は中学生だった。外の空気を吸い込むたび、ふと、思い出す。

西宮に父と妹が来ていたみたいで、帰りに私の家へ寄ってくれた。ブン、と 駐車場に車が停まるおと。小さなレンズから外を覗くと、少しまあるく実家 の車とそれから降りる妹の姿が映った。手を拭いたあと、タオルを流し台の フックに吊りなおした。ピンポンとベルが鳴ったのでドアを開けると、少し 照れた表情の妹が立っていた。妹は少し人見知りをする子で、私の前でも久 しぶりに会うととっても照れ屋さんになる。かわいい、なあ。

おととしに比べてだいぶん生活観あふれる家になったなあ、と父が笑ってい た。引っ越してきたばかりのころは自分の部屋がとにかく落ち着かなかった けれど、いまは実家よりも落ち着いて過ごすことができているかもしれない なあ。妹はベッドにちょこんと座ったまま、部屋をぐるりと見渡していた。

成人式で実家に帰っていた日の帰りのバスで、同じく実家に帰っていた枝ち ゃんと偶然一緒になった。「実家も落ち着くけど、4日目くらいから一人暮ら ししているほうの家に帰りたくてしょうがなくなっちゃったよ。不思議。」 と、枝ちゃんが笑っていた。ほんとだね、と笑った。それはとっても寂しい こと、なのかなあ。

バイバイ、と手を振ったあと、すう、と深呼吸してみた。おかえり、でも、 いらっしゃい、でもなかった。いってらっしゃい、でもなかった。ひとつも ぴったりとくる言葉は浮かんでこなくて、ただ笑顔で手を振った。また、高 松帰るけんね。待っててね。

*

どうしたん?と言われて、声が聴きたかったから、と言ったら電話の向こう でのちが転げて笑っているのがわかった。嬉しそうな声のまま、ありがとね さやちゃん、と言われた。のちの声の響きがとっても好き、だなあ。それか ら、ぎゅうと抱きついたときのシャンプーの香りが大好き。…のちに会いた くなってきちゃった。

1月15日(日) 晴れときどき曇り

 

手を繋いで、左肩にかかる鞄の紐をもう片方の手の指に絡ませた。ふと振り 返ったのちが、ぱっと手を離した。竹内先輩が「俺らも手ぇ繋ごかあ」と友 達と手を振りながら通り過ぎていった。のちの鼻の頭はほんのり赤くて、目 を合わせてくすくすと笑った。学校の近くで手繋ぐもんじゃないなあ、と笑 うのちの左手は、私の右手をそうっと握ってた。そうだねって、笑った。

鞄に入れた切符の場所を探すために改札口でよく立ち止まってしまうので、 こうして電車に乗るときは必ずふたり分の切符をのちが預かってくれるよう になった。差し出される右手に切符を重ねる。ふとした日常のなかに、ふた りだけの約束がたくさん溢れてる。

初めて訪れる街でも、不安はすこしも生まれてこなくて。目的がなければ本 屋に立ち寄らないというのちは、何を買うわけでもなく本屋に立ち寄る私を 引張って、本屋さんのドアから私を遠ざけた。くすくすと笑いながら、のち の大きな声はきっと本屋さんでは響いてしまうから、こうして空の下にいる のがやっぱりお似合いだなあなんて思った。

とびきりの心地良さを届けてくれるひと。レポートの締め切りに追われてあ たふたとしていたのだけれど、うんと気分転換になった。アルバイトが始ま る時間までの、ふた駅分の小さなデート。預かってもらっていた切符をのち から渡してもらって改札を出ようとしたとき、同じゼミの中村くんたちとす れ違った。「俺といるときに知り合いとすれ違うとすぐ顔赤くなるなあ」と のちが笑ってた。さっき竹内先輩にからかわれたときののちほど赤くはない と思うのだけど、なあ。

*

金曜までのレポートは無事に提出できました。よかった。時間がない、忙し い、疲れた、という言葉をできるだけ口に出さないようにしよう、が試験期 間中の目標です。日ごろの目標としてもあてはまるかな。レポートの追い込 みをしているときに菊ちゃんがみかん(丸ごとひとつ)をくれて、それに大 笑いしてしまった。どんなに忙しくても疲れていても、笑顔は心がけていた いなあ。

愛車のヴィッツを毎日のように駐車場で磨いているのですが、その度に同じ アパートの方たちがにこにこと笑顔で何か話しかけてくれたり手を振ってく れたりします。こういう温かさも、やっぱり忘れずにいたい。

1月11日(水) 晴れ

 

☆ A Happy New Year ☆

あけましておめでとうございます。2006年の始まりは大好きな千紗ちゃんと ジャンプ(飛躍できますように)しました。昨年はとても充実した一年だっ たので、今年も一日いちにちを大切に過ごしていきたいと思っています。 2006年もBaby lipstick(祝・4周年)を温かく見守っていただけたらと思いま す。よろしくお願いします。

P.S. もうしばらく季節外れのサンタさん(左)を可愛がってください。(>_<)

2006年 1月1日(ワンワン)(日) 晴れ

 

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