並木から降る橙が、加速する度に舞い上がる。落ち葉はかさかさとした印象 だけれど、その時ばかりは色とりどりの羽みたいだ。ふうわっと、またひと つ。車線をひとつ変更するたびに、上手くできた、とのちが嬉しそうに目を 細めていた。助手席で感じる秋は、あたたかい。持ち合わせたCDは懐かしい 曲ばかりで、いつしかのちの声が重なっていた。

海は白くて、空との境界は曖昧だった。透けるような優しい雲がいくつも重 なっていて、時折、櫛で梳いたみたく流れていて。こうしてのちの隣にいる と、映るものがとても優しく感じる。のちにとっても、そうであればいいの だけれどなあ。きゅ、とのちが私の右手を繋いでくれた。驚いた?って、い つものちの目は眠たそうな猫みたいに優しい。

プルコギ屋さんでお腹いっぱいになったあと、これから卒業までに行きたい ところをふたり口にしながら笑っていたら、お店のおじさんがふたつの星を テーブルに置いてくれた。「もうすぐ、広場にツリーを飾るんです。よかっ たら、プレートにメッセージ書いてくださいね」と、星と同じ色をしたペン を添えて。

黄色に黄色じゃ文字が映えないよ、とふたりで笑った。先にペンをとったの ちの星には、“のっち、さやか”と。そこはシンゴ、じゃないんだ?と笑っ たら、とても恥ずかしそうにしていた。もうひとつの星に、心を込めて。想 いを文字にするのは好きだけれど、目の前にして綴れるほど大人でもなくて。 筆記体にして、わざとのちに読まれないように、ね。

大切な想いほど、曖昧にぼかすようになった。ツリーは、16日頃から飾られ るのだそう。卒業までに行きたいところ、またひとつ増えちゃったね。ふた り神戸で過ごす最後の冬が、とても待ち遠しい。切ないけれど、とてもわく わくするのです。

11月13日(月) 曇り

 

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